ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「オレンジの季節」/角川書店刊

鯨統一郎さんの「オレンジの季節」。

立花薫は、朝礼の一分間スピーチで上司で恋人の戎伶華にプロポーズした。伶華の答え
は条件つきの‘イエス’。その条件とは、薫に仕事を辞めて『専業主夫』になれという
ものだった。悩んだ末、薫はその条件を飲んだ。戎家の婿養子として迎え入れられた
薫だったが、そこで待ち受けているのは大家族の戎家のしきたりと、膨大な量の家事
だった――。

本書は2部形式になっています。第1部は薫が大家族の戎家に入り、様々なトラブルを
経て戎家の人々に受け入れられる課程を描いたホームドラマの『平和の章』。この部分を
読んでいる時は、頭にずっと阿部寛主演のヒットドラマ「アットホームダッド」を思い
浮かべていました。本書の主人公はあの阿部ちゃんよりは抵抗なく家庭の主夫に収まり、
家事も徐々に上達していって、最後にはご近所のおばさまたちとの交流までそつなく
こなす上級主夫へ。途中ヒロインの姉との不倫疑惑なども挟みつつ、物語はまるでホーム
ドラマを見ているような感覚で楽しめました。

・・・が、始めにお断りしたように、本書は2部形式です。第2部があります。そして
作者は鯨統一郎さんです。そんな、ホームドラマで物語が閉じる訳はありません。
ありませんが、な、なんじゃー、この展開は!!!!第1部を読んでいる限り、この展開
を予測できる人はまずいません。それ位ぶっとんだ展開が待ち受けています。はっきり
云って、別の話?と思う位、物語の状況は一変します。どう一変するのかはお読み頂く
しかないのですが、私は違和感しか覚えなかったなぁ。なんでそうなるの?みたいな。
所々伏線らしきものもちりばめてはいたようですが、そんなものはほとんど意味をなして
いません。はっきり云って、これはアンフェアだと思う。というより、作者はミステリと
して書いてはいないかもしれませんが。しかもいきなり第3の人物まで登場してくるの
にはびっくりを通り越して唖然。誰だよ、お前!みたいな(苦笑)。一体、鯨さんが
本書を通じて何を書きたかったのか疑問。第2部の結末を書きたかったのならば、第1部
をあそこまで長く書く必要はないし、もっと第2部を長く書いても良かったと思う。
とにかく、1部と2部のアンバランスさが物語全体を失敗作にしているように思えて
なりません。第2部の唐突さについていける読者はほとんどいないのではないかなぁ。
だいたい、登場人物全員別人みたいになってるし。しかもあのラスト。何、それって
感じ。う~ん、変な作品だった。さすが鯨さんだ・・・(変な所で感心)。

ちなみに第2部に当たる部分にも『○○の章』とあるのですが、○○部分はネタバレ
になってしまうので伏せます。中島さんの後にコレを読んだという所に、何故か運命的
なものを感じました。勘のいい方ならこれで内容が・・・予測できませんね、多分(苦笑)。

衝撃の第2部が気になる方、是非お手に取ってみて下さい。
まともなミステリが読みたい方、他の作品を探しましょう。