ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

2006年マイベストランキング

2006年も押し迫って参りました。読書系ブログの方がこぞって早々と今年のランキングを
発表してらっしゃるのを横目で眺めつつ、自分のベストは何だろう?とずっと考えていました。
よそ様のランキングはとても面白く、読んでてその方の読書の傾向などもわかって楽しいのですが、
自分で考えるとこれがなかなか難しい。明日記事にしたら違ったランキングになるかも
しれない・・・優柔不断な私が物にランキングをつけること自体間違ってる気もしますが^^;;

ちなみに対象本は私が今年(1月1日~12月25日まで)に読んだ本。総数126冊。
今年刊行の作品に限るとすごーく狭いランキングになっちゃうので^^;そして、これは
あくまでも私的意見ですので、偏ったランキングになっても大目に見て下さいね。


ではまず、長編ミステリ部門。
図書館から借りている三津田さんの「厭魅~」や竹本さんの「ウロボロス~」などは
まだ読めていないのでランキング対象外なのが残念な所ではありますが。


1.京極夏彦/「邪魅の雫
なんといっても、3年ぶりの新作。これだけでもうランキング上位は確実(単なる盲目的
京極ファン)。前半場面が錯綜し、何が何やらわからなくなったところに、後半のたたみ
かけるような怒涛の展開。全てが繋がるラスト。いつもより少なめだったけど、説得力のある京極堂
の薀蓄。そして何より榎さんの存在感の凄さ。あの出番の少なさにして、見事に榎さんの物語
となっている所がさすがでした。ラストの一言に・・・絶句。榎さんですねぇ。

2.道尾秀介/「シャドウ」
やはり今年一番の「やられた!」作品はこれでした。このミスリードはとにかく素晴らし
かった。緻密に練られた伏線の数々に、ガツンと来ました。これこそがミステリ!と言わしめる
ような作品でした。1位と迷いましたが、文章の上手さという点で京極氏に軍配をあげました。
道尾さんは「向日葵の咲かない夏」も良かったのですが、完成度の高さで言えばやはりこちら
を押したいです。

3.乙一/「銃とチョコレート」
長編ミステリに入れてよいのやら迷いますが、ミステリランドの中では今年読んだ作品
の中ではダントツでした。登場人物の名前がチョコレート屋の名前だったりしていかにも
児童書の体裁を取っているものの、中身は意外な展開の連続で、大人が読んでも全く遜色
なく楽しめる作品です。ヒーローがヒーローでなかったり、仲間が仲間でなかったり、
母親が母親らしくなかったり・・・いろんないい意味での裏切りが詰まった作品。でも
とにかく面白かった。

4.貫井徳郎/「空白の叫び 上・下」
同じ少年犯罪を扱った「天使のナイフ」と悩む所なのですが、どちらがより自分の心を
揺さぶる作品だったかと問われると、こちらを選びたいです。ミステリとしての完成度は
「天使~」の方が上かもしれませんが、犯罪を犯した少年の心理がこれでもかと迫って来て、
読む手が止められなかったです。ラストにかけては少し急ぎすぎという感じもありましたが、
力作であることは間違いないです。

5.宮部みゆき/「名もなき毒
存在感の薄い主人公、杉村三郎シリーズ。にも関わらず、人間の内面からにじみ出てくる毒の
怖さをまざまざと見せつけられて、とんでもない存在感のある作品に仕立てあげた宮部さんの
手腕が素晴らしかった。裏のヒロインとも云える原田いずみという人物を生み出した宮部さん。
やはり最も怖ろしいのは人間の持つ毒だと言わしめる作品でした。人間の心理描写を書かせたら
ほんとに上手いですね、宮部さん。

6.東野圭吾/「赤い指」
実に久しぶりの加賀刑事シリーズ。とにかく加賀さんが今まで以上に渋くて格好良かった。
赤い指に隠された謎にやるせないものを感じました。ただし、評価したいのはそちらよりも
加賀親子のエピソードであったりするんですけど。東野さんにはあるまじき(!?)ラストの
爽快感にノックアウトされました。あのラストだけで読む価値ありと思ってしまいました
・・・偏った意見ですいません・・・。

7.海堂尊/「チームバチスタの栄光
医療ものが苦手な私ですが、それぞれのキャラ造詣が巧みで、テンポよく進んで行ったので非常に
楽しめた作品。白鳥と田口のコンビがいい味を出していて良かった。ミステリとしては
どうなんだ?という部分もありましたが、デビュー作でここまで書けるというのはすごい
と思いました。本年度の作品ではありませんが、読んだのは今年の5月。これで目をつけて
続編も早々と読みましたが、そちらは正直がっかりの出来でした・・・。

8.我孫子武丸/「殺戮にいたる病」
10年の積読からやっと日の目を見た作品。ブログをやってなかったら多分一生積読だった
かも・・・。おそらく10年前に読んでいたらランキングはもっと上位だった筈です。ただし、
このラストを10年前に書かれていた我孫子さんはやはりすごい人です。もちろん気持ちよく
騙して頂きました。ミステリ好きで未読の方には是非読んで頂きたい作品。

9.三津田信三/「凶鳥の如く忌むもの」
横溝正史ばりのおどろおどろしい世界をこれでもかと堪能でき、久しぶりに「本格」
っぽい作品を読んだ気にさせてもらいました。途中の薀蓄には多少辟易しましたが、全体
の構成や題材が非常に好みで、単純に面白かったです。ただし、この手の本格作品の例に
漏れず、「そんなバカな~」的な謎解きであることも確か。実行できるかどうかを考えては
いけません。本格ってそういうものだと思って読むべき作品(どんなアドバイスだ^^;)。
本格ミステリベスト入りした前作の「厭魅~」を読んでいたらランキングが違っていた
かもしれません(もうすぐ読みます)。

10.薬丸岳/「天使のナイフ」
4.で貫井さんに軍配を挙げたものの、やはり今年読んだ中での完成度の高さを考えると
ランク入りさせたい作品。もうちょっと上でもいいんですが、5位以下はほとんど大差ない
と思っていただきたいです。どれも面白かったという点では同じ位。少年犯罪を被害者・
加害者両方の視点から冷静に捉えていて、非常にバランスのいい作品だと思いました。
デビュー作としては素晴らしい出来と云えるのでは。



とこんな感じのランキングになりました。後期に読んだ作品がほとんどでしたね。
今年刊行の作品も意外に多かったです。完全に偏ったランキングですいません。
次回は短編部門を発表したいと思います。ついでにワーストも入れるか・・・
やめた方が無難かなぁ・・・。