ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

2006マイベストランキング < 2 >

2006年マイベスト、短編集部門です。

普通の短編集、連作短編集どちらも評価対象。
前回同様、私が今年読んだ作品が対象です。
とにかく短編集、とりわけ連作短編集というジャンルが大好きな私。
今年もいろいろな短編集を読みました。


1.大山誠一郎/「アルファベットパズラーズ」
これは完成度高かったです。緻密なロジックで彩られた本格パズラー小説。
どの作品もよく考えられていて、それぞれに面白かったです。ラストの展開には
正直残念な気持ちもありましたが、「やられた!」と思わされたのも事実。

2.田中啓文/「落下する緑」
田中さんって、なんとなくSF畑の人なんだと思ってたんです。でも何気なく図書館で
見つけた本書、ぱらぱらページをめくったら面白そうなので手に取ってみました。
これが、大当たり!ジャズ奏者が主人公の連作ミステリですが、ジャズの知識がなくても
楽しめるし、とにかくジャズ聴きたい!って思わせてくれました。永見の飄々とした
キャラも大好き。まさかこの数ヶ月後に同じ作者のとんでもない作品を読むことに
なろうとは・・・。

3.鳥飼否宇/「昆虫探偵 シロコパκ氏の華麗な推理」
もう、設定からしてユニーク。昆虫大嫌いの私ですが、なるべく映像を浮かべないように
読みました。出て来るキャラクターが全て昆虫で、昆虫世界の中で起こる事件を描いた
という不条理小説。なんだこれ、と思いつつ、面白くて一気読み。ラストで意外なメロドラマ
が展開されますが、その辺はご愛嬌?ラストまで読まないと、この題名に不審を覚える方が
ほとんどではないかなぁ。

4.大崎梢/「配達あかずきん」
本好きならば大抵の方は楽しめる作品だと思います。書店員が主人公の日常の謎系ミステリ。
普段お世話になっている本屋さんの裏側が覗けて、とても興味深い。この本を読むまで、書店の
本のレイアウトなんてあんまり気にしたことなかったのですが、書店側はいろいろと考えて
るんですねぇ。

5.坂木司/「シンデレラ・ティース」
こちらは歯医者の裏側がよくわかるお仕事シリーズ第2弾。私はわかる世界なだけに、
気になる表現もありましたが、歯医者嫌いの主人公が、少しづつ苦手意識を克服して、成長
してゆく姿が爽やかに描かれている良作でした。

6.平山夢明/「独白するユニバーサル横メルカトル」
本年度このミステリーがすごい!第1位に輝いた異色の短編集。正直読んでて吐きそうに
なった作品も多かったのですが、完成度の高い技巧的作品も多く、全体的には非凡な才能
の片鱗を感じた短編集でした。私はなんといっても、表題作が好きでした。この題名にして
この内容。好きですねぇ。

7.奥田英朗/「空中ブランコ
町長選挙」も今年読んだのですが、作品としてはこっちの方が好きです。ちなみに「イン・
ザ・プール」は未だに借りれてません^^;読んだ方にはおわかりかと思いますが、この
シリーズはもう伊良部のキャラの魅力がずば抜けているということしかないです。あとは
マユミちゃん。とにかく面白いので読んでみて、としか言い様がないですね。

8.田中啓文/「笑酔亭梅寿謎解噺」
どうやら文庫では「ハナシがちがう!」とかいう題名に改題されたようですが、私が読んだ
のは単行本。ちょうどドラマの「タイガー&ドラゴン」を見たばかりだったので、両者の
類似にびっくりした覚えがあります。でも、本書の1作目はドラマ放送よりもずっと前に
書かれたものなので、ドラマが似ていた、というべきなのかもしれませんが。落語とミステリ
をバランスよく絡め、軽快な筆致で読ませる娯楽作。師匠・梅寿のキャラがなんといっても
秀逸。

9.森谷明子/「七姫幻想」
幾世にも渡って語られる、七夕の七姫の物語集。幻想的な設定と美しい文章で実に優雅な
物語に仕立て上げてます。ただし、それぞれの姫君のエピソードは美しいばかりではなく、
人間のエゴや男女の愛憎など、どの時代にも共通の人間の醜い部分も描かれています。
悲しくてやるせない結末もありますが、それぞれに納得できるラストでした。それぞれの
作品が微妙にリンクしてるのですが、そのリンクの仕方がわかりにくかったのがちょっと
残念な所でした。

10.大倉崇裕/「福家警部補の挨拶」
刑事コロンボに触発された作者が描く倒叙ミステリ。福家警部補のキャラ造詣が絶妙。
本人の感情が一切出て来ないのに、犯人と対決していても何故か冷たい印象を与えない
不思議なキャラクター。犯人側の殺人の動機がどれも納得できないものではないせい
かもしれません。福家警部補と犯人の対決シーンはどれも読み応えあるものばかりでした。



こんな感じになりました。みなさんの読まれた作品はありましたでしょうか。
どの作品もとても愛着があり、今年は短編集の当たり年だったと云えるかもしれません。
まだまだ挙げたい作品がたくさんあったのですが・・・。物集さんの帝都シリーズとか、
米澤さんのトロピカルパフェとか。アーチーの2作目も出たし。

来年も面白い短編集に出会えると良いのですが。
お薦め作品がありましたら是非ご一報下さい!