ミステリ読書録

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三雲岳斗/「旧宮殿にて 世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦」/光文社刊

三雲岳斗さんの「旧宮殿にて 世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦」。

婚礼の祝宴で、その場にあった筈の肖像画が忽然と消えてしまった。ミラノ宰相ルドヴィコは、
この奇妙な謎を相談すべく、天才的な頭脳と才能を持つ異郷の宮廷技師、レオナルド・ダ・ヴィンチ
の元を訪れた――天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが旧宮殿で起きる不可解な謎を華麗に
解き明かす連作短編集。


何の予備知識もないままに、面白そうだと思って借りてみました。レオナルド・ダ・ヴィンチ
といえば、ついこの間展覧会を観に行ったばかり。そのダ・ヴィンチが謎を解くというのに
何より興味を引かれたし、連作短編で読みやすそうだったので。

結果、大当たり!とっても面白かった。連作短編形式なので、一話完結で読みやすいし、
15世紀のミラノの雰囲気が作品とマッチしていて良かった。レオナルドと宰相ルドヴィコ、
ルドヴィコの庇護を受ける歳若き美少女・チェチリアの三人の関係もいい。当時の時代背景も
丁寧に描かれていて、その時代の特徴が伺い知れます。イタリアはもともと大好きな
国なので、自分もミラノにいるような感覚になって読めました。
一作ごとの謎解きも面白く、レオナルドが芸術家だからこそ導き得る解決法に素直に感心
できました。どれも程よく纏まっていて、なかなか読ませてくれるなと思いました。

実際、この間ダ・ヴィンチ展を観て、ダ・ヴィンチの天才っぷりを見せつけられていたので、
本書に出て来るように、天才的な閃きで不可解な謎を解いてしまってもおかしくないと
妙に納得してしまいました。作品観てても、唯一無二の才能を感じましたから。普通の
思考回路からは到底考えつかない底なしの才能。こういう天才的な人物を探偵役に据える
というのが面白い。気まぐれで偏屈だけど、チェチリアにだけは弱いというのもなんだか
くすりと笑えて良かった。ダ・ヴィンチのキャラは非常に魅力的でした。美青年だし(笑)。

美術好きならばより楽しめると思いますが、そうでない方にも十分読み応えのある連作
ミステリになっています。海外が舞台ですが、カタカナ苦手な私でも非常に読みやすかった。
調べたところ、これはどうやら続編のよう。またやっちまったか、私・・・。まぁ、単独
作品と云って差し支えない内容なので、問題はなかったですが。これ以外にもレオナルドたち
に出会えるのは嬉しい。早速借りてこなければ。

ダ・ヴィンチの作品もちょこちょこ登場するので、ダ・ヴィンチ好きならば間違いなく
にやりとできるでしょう。病院でこっそり死体のスケッチをするとか。確かにやってそう(笑)。

誰に薦められるでもなく、こういう‘当たり’作品に出会えるのは本当に嬉しい。
三雲さんは初めて読みましたが、かなり実力ありと見ました。今後も追いかけてみたい作家の
一人になりました。