ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

折原一/「タイムカプセル」/理論社刊

折原一さんの「タイムカプセル」。

栗橋北中学校の卒業式の日、三年A組の有志数人は校庭にタイムカプセルを埋めた。10年後、
カプセルを埋めたメンバーたちの元に、奇妙な手紙が届けられる。そこには、タイムカプセル
を開くセレモニーの日時と気味の悪い文章が綴られていた。メンバーの一人でフリーのカメラマン
の綾香は、取材と称して当時のメンバーたちを尋ねて回ることにする。しかし、取材を続ける
綾香の周りでは次々と奇妙な出来事が――理論社ミステリYA!シリーズ。


懲りずに引き続き追いかけているミステリYA!シリーズ。一度こういうシリーズに手を出して
しまうと、なんとなく制覇せずにはいられない性質でして・・・いまいち‘アタリ’に当たら
ない(ダジャレではない)にも関わらず、見つけるとつい嬉々として手に取ってしまってます。

で、これは久々に読む折原さんだし、クライマックスは袋とじになってるみたいだし(図書館本
なのでもちろんすでに破かれた後ですが^^;)、結構期待して読んだのですが・・・。

むー。この結末はなんじゃー。だいたい、ヤングアダルトものの筈なのに、主人公たちが
既に成人してしまっている所からして、このレーベルで書くのに相応しいかどうか疑問が。
確かにタイムカプセルを埋めた当時の回想シーンでは中学生だけど、物語のほとんどは25歳の
メンバーたちだから、青春ミステリとは言えないと思う。まぁ、私のように大人だって読む
んだから、その辺にこだわっても仕方ないのかもしれないけれども。
そこを差し引いても、正直冗長。タイムカプセルを開ける日になるまでが長い、長い。毎回
思うけど、このレーベル、もうちょっとページ数少なくてもいいんじゃないか?多分もっと
削って凝縮させた方が、この作品も面白かったと思う。折原さんらしい、ぞくぞくした
空気は十分出ていたと思うけど、あそこまで恐怖を引っ張った挙句のオチがあれとは・・・。
確かに、あの袋とじ部分はヤングアダルトを意識したんだろうと思う。大人向けのミステリ
だったら、多分もっとホラー的な結末にしていたはず。でも、それだけに作品のレベルが
下がってしまった感が否めない。せっかくの袋とじの意味がほとんどないような気がしました。

折原さんだから、叙述トリックはもちろん入っているだろうと期待していました。しかし、
「お前は誰だ」がそう来るとは・・・。ある意味失笑・・・。いや、この部分は素直に
感心したのが半分、呆れたのが半分というか。ばかばかしいといえばばかばかしいけど、
こういうのは結構好きかも。







※以下、ネタバレ気味です。未読の方はご注意下さい。







腑に落ちなかったのは、綾香が何年も会っていなかった富長ユミの携帯にメールを
送れたのは何故かということ。ユミの前に会っている孝介と美和もユミとは卒業以来
会っていない筈だからその二人のどちらかに聞いたというのもおかしいし。10年前に
中学生が携帯を持っていたとは考えにくいし、もしそうだとしても10年間アドレスが
変わっていないというのはあり得ない気がする。一体綾香はどうやってユミのアドレス
を知ったのでしょう?

あと、ユミのマンションに現れたハイヒールの女性は何だったんだ?何かの伏線かと思って
いたのに、結局なんでもなかったので拍子抜け。恐怖を煽る為だけの要素だったのか。
なんだか全体的に無駄な描写が多かった気がして仕方ない。最後まで読んでも何か
すっきりせず、消化不良な思いばかり残ってしまいました。




ううむ。どうもぱっとしない作品が多いミステリYAシリーズ!。それでも、やっぱり今後も
読み続けてしまうのだろうなぁ。
とりあえず「オチケン!」に期待しよう・・・。