ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学/「ホルモー六景」/角川書店刊

万城目学さんの「ホルモー六景」。

京都産業大学玄武組の二人静と呼ばれる定子と彰子。ホルモーにおいてその勇猛果敢な戦いぶりを
褒め称える声は後を絶たない。しかしある人物は二人の関係を「犠牲均等ルールに基づくバランス
の産物」と評する。その最強の二人静の均衡がある日ついに破られ、ホルモーの戦いに影響が
――二人に一体何があったのか!?(「鴨川(小)ホルモー」)。『鴨川ホルモー』の番外編
ストーリー六編を収録。


前作『鴨川ホルモー』を読んで即行予約をしたのが5月の始め。やーーーっと回って来ました。
毎日のように図書館HPの予約状況をチェックしては「まだかなまだかな」と心待ちにしていた
本書。いやー、でも、これはやっぱり前作を読んですぐ読むべき作品でした。『鴨川ホルモー
を基にいろんな角度から舞台裏が描かれているので、もっと鮮明に内容を覚えているうちに読み
たかったし、できれば実物を手元に置いて読み比べてみたかった。細かい部分(他大学のこととか)
なんかもう忘れちゃってたもん^^;『鴨川ホルモー』もっかい読み直したいよ~^^;
『続編ではない』というのは聞いていましたが、時代まで違う話が入っているとは。でも、本書を
読んでより『鴨川ホルモー』の面白さを再認識できたような気がしました。『ホルモー』に纏わる
意外な事実や歴史上の人物との関わりなんかも描かれ、意表をつかれるストーリーに驚かされ
ました。そして同時にいろんな『恋』が描かれる短編集でもあり、切ない恋心に一喜一憂しながら
読めました。ラスト一編は思わぬ感動に包まれ読了。じーん。期待通り、待っただけある面白さ
でした。満足!


以下、六編の短評。


『第一景 鴨川(小)ホルモー』
二人静の二人、いい味出してますねぇ。恋と友情を優先させてあっさりホルモーの戦いを捨てちゃう
とこが素敵(笑)。恋の成就の為の提案だったのに、最後には男そっちのけで戦ってる二人も
また素敵。相手に見えないとはいえ、鬼連れてデートって・・・見える人にとってはすごい
光景だよね^^;


『第二景 ローマ風の休日』
凡ちゃん再登場!今回一番楽しみにしていたのが凡ちゃんとの再会でした。『鴨川ホルモー
でのオトコマエっぷりには惚れましたからね。彼女が安倍に告白するまでの背後にはこんな
エピソードが隠されていたのですね~。店長の危機を救うべく立ち回る姿の男前っぷりといったら!
またしても惚れ直しました。やっぱり凡ちゃんカッコイイ!『少年』はご愁傷様^^;


『第三景 もっちゃん』
これはやられましたねー!語り手の『安倍』のことに気付いてようやく『もっちゃん』の正体
に当たりをつけられましたが、完全にミスリードされてました。細かく伏線は張られていたのに。
おっと、これってミステリの手法じゃないか!万城目さん、ミステリ書いても面白そうかも!?
こんな人物ともホルモーは繋がっていたのね。彼のあの作品と、読まれなかったラブレターが
読んでみたくなりました。ところで、『べろべろばあ』での宴会の予約人数が十人多かった
理由って『鴨川ホルモー』に出てきたんでしたっけ?^^;すっかり忘れてるよぅ(泣)。


『第四景 同志社大学黄竜陣』
ここでもまた意外な歴史上の人物とホルモーとの関わりが!随分話が広がるなぁ(笑)。芦屋の
元カノ巴嬢のお話。巴ちゃん、なかなか素敵なキャラじゃないですか。なんで、芦屋なんかに
ひっかかったんだ?恋は盲目ってやつなのか。終盤のあの態度は何だ!最低男だな、まったく。
ラストが第一景の二人静のシーンと重なっているのも面白い。あの場にいたのね、巴ちゃん。


『第五景 丸の内サミット』
ホルモーOBが合コンで再会!って、会った四人全部がホルモー経験者って、どんな確率だよ^^;
ホルモーは京都だけのものかと思ってましたが、東京バージョンもあるとは!あとの2大学が
どこなのかが非常~に気になります。やっぱり東大は入るよね、多分。それにしても、平将門
知らない人間がいるとは・・・ほんとに大学出?^^;


『第六景 長持の恋』
これは良かった。ひょんなことから時空を超えて文通することになったおたまとなべ丸の
やりとりにほんわかしていただけに、文通の結末が切ない。でも、現実世界のラストにすべてが
報われる思いがしました。高村のちょんまげにもちゃんと理由があったんですね。『目印』が
琵琶湖型のあざというのにちょっとウケましたが(笑)。
ヒロインの珠実には妙に共感できる部分が・・・というのも、私も免許取得の際非常~~~に
苦しんだ覚えがあるからです・・・。仮免は二回落ちたし、本免も一回落ちたし、ペーパーでも
一回落ちたという奇跡の経歴の持ち主だったりします^^;;もちろん、現在ゴールド二回更新の
立派なペーパードライバーです♪・・・運転向いてないんだよぅ(T_T)。



いろんな歴史的事実との繋がりもあって、ホルモーの世界の意外な広がりに驚きました。まさに
万城目ワールド全開という感じ。『鴨川ホルモー』が手元にないので、細かいリンクを読み落として
いそうなところがちょっと残念です。それでも充分楽しめました。面白かったぁ。
今度は純然たる続編なんかも出して欲しいですね。まだまだホルモーの世界に浸りたいです。
凡ちゃんと安倍の恋愛も読みたいぞ~~。