ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学/「ザ・万歩計」/産業編集センター刊

万城目学さんの「ザ・万歩計」。

鴨川ホルモー』『鹿男あおによし』誕生秘話から、学生・社会人時代の抱腹絶倒エピソード
まで、著者の体験談を綴る初のエッセイ集。


桜庭さんのエッセイ記事で書きましたが、最近やけにエッセイづいている私。今回は現在人気
急上昇の人気作家・万城目さんの初エッセイです。著者の作品、『鹿男~』だけ未読なのですが、
ホルモー二作ですっかりファンになりました。という訳で、本日返却棚にぽつんと置いてあった
本書を見かけて即捕獲。桜庭さん同様、予約なしで借りれるとは思っていなかったのでちょっと
得した気分でした。

さてさて、著作がモリミーと比較されることの多い万城目さんですが、エッセイの方はどうなの
かしらんと興味津々で読みましたが、こちらはほぼ実話中心、弱冠妄想のスパイスが入ってる
って感じでした。ただ、この実話がめちゃくちゃ面白い。読んでてついつい何度も噴きだして
しまいました。もちろん、実話を元に、万城目さんが面白おかしく書いてるからなんですけど。
文章の書き方なんかはやっぱり森見さんに似てると感じる部分もあるのだけど、基本的には
万城目さんのカラーがよく出ているエッセイでした。

一番強烈だったのは真っ黒い羽を持ったアイツとの汗と涙の格闘を綴った『御器齧り戦記』
ですね・・・ラストのG16事件のくだりは、モリミーの『太陽の塔』のアノ恐るべきGシーン
を思い出しました・・・ってか、こっちは実話だよ~~^^;;;うえぇ。もう、絶対その場面には
立会いたくない。いや、もし私の部屋で同じ出来事が起こったとしたら・・・私、万城目さんの
ような勇猛果敢な後始末は出来ませんッ。多分見た瞬間気絶するとおもう・・・。

ああでも、Gとの格闘シーン、すごく共感できました。私も、万が一一匹でも発見した日には
涙を流し絶叫しながらゴ○ジェットで抹殺するまで気が休まりません。万城目さんによると、
Gを前にした人間は、『ゴキブリを前に戦う者』『逃げ出す者』の二通りに分かれるそうで、
今の私は間違いなく前者です。実家にいた時はもちろん後者だったのですが、今は一人で
暮らしているので前者にならざるを得ない訳です。で、逃げ出す者の多くは『なかったことにする』
らしいのだけれど、これは私には無理。だって、寝てる間に布団の上とかに来たらどうするのよ!
って、考えただけでもう、落ち着かない。眠れない。だから、逃げられたら、再び姿を現すまで
ゴ○ジェットを傍らに置いて獲物を狙うハイエナのように神経をとぎすませます。この世からヤツ
さえいなくなればあたしは幸せになれるんだ・・・などとつぶやきながら・・・(完全に目は
据わってます^^;)。

精神的苦痛を伴うのでG談義はほどほどにして(書くなよ^^;)、他に面白かったのは万城目
さんが工場で働いていた時の同僚カンゲキ氏の話。カンゲキ氏がファイルを開いて嬉しそうに
『チャララリララ~~』と口ずさむ場面を想像して笑ってしまいました。確かに、万城目さんの
言うとおり、『オリーブの首飾り』と今井美樹の『PRIDE』はシンクロするような・・・
(驚くべき新発見!?)。

面白エッセイばかりかと思いきや、『ねねの話』には思わず涙ぐみそうになるくらいジーンと
してしまいました。なんだかんだいって、きっとねねは万城目さんのことが気に入っていたの
だろうなぁ。お母さんの予告通りだったのに驚きました。それまで頑張ったんだね・・・。

鴨川ホルモー』や『鹿男~』の誕生秘話も興味深く読みました(『鹿男~』は読んでないけど^^;)。
万城目さんって、多分基本的にはすごく真面目な人なんじゃないかと思うんだけど、真面目に
くだらないことに取り組むところが面白いなぁと思いました。ファンなら楽しめるエッセイ
ではないかな。