ミステリ読書録

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アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)

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東京・渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム 『アンドリュー・ワイエス-創造への道程(みち)』

アメリカン・リアリズムの巨匠、アンドリュー・ワイエス。完成画となるテンペラとともに素描・
水彩にも焦点をあて、ワイエスの創造のプロセスを紹介。水彩・素描を中心に、その準備制作を
経て完成されたテンペラ約10点、総点数約150点によって構成。



一週間空いてしまいましたが、先週観たフジタ展の後すぐに渋谷に移動して観てきました。
ワイエスというと、去年観た青山ユニマット美術館の企画展で、ヒトメボレした画家です。
こんなに間を空けずに大きな展覧会が観れるとは思っていなかったので、開催予定情報を聞いた時は
とても嬉しかった。またワイエスの世界に浸れることをとても楽しみにしていました。

さて、今回の展覧会は一般的に有名なテンペラ画は数える位しか来ておらず、その前に描かれた
水彩や素描画がほとんどでした。ワイエスの細密なテンペラ画が大好きなのでその点はちょっと
残念ではあったのですが、製作過程と思われる水彩画も素晴らしいものでした。水彩の方が味
があって良いと思えるものさえあったくらいです。大雑把に描いているようで、構図がほとんど
ブレていない。計算して描かれていることがわかりました。

ワイエスの絵を観ていると、しんと張り詰めた静寂の中に、生命の伊吹や一陣の風を感じます。
隙のない細密さで描かれた一瞬の世界を見つめていると、絵の中に自分が同化していくような
錯覚を覚えます。一つの映像をそのまま切り取ったかのような、リアリティ。でもそれはリアル
であると同時に、明らかにワイエスが視た『世界』であり、非現実の世界でもあるのです。

どんな絵でも、静かに感動させてくれるワイエスの絵が大好きです。行けてよかった。
こんなに大々的に点数が来たのは14年ぶりのことだそう。ワイエスファンになってこんなに
日が浅いうちに、これだけの展覧会が観に行けたのは本当にラッキーでした。水彩画も素敵
だけれど、やっぱり次はもっとテンペラ画がたくさん観たいなぁ。

ビデオ上映では、ワイエスご本人のインタビューが聞けたのも嬉しかった。まだご存命で、現在
90歳を超えるご高齢でいらっしゃるけれど、今もその製作意欲は衰えず、絵を描き続けて
いらっしゃるとか。言葉の一つ一つも重みがありました。日本のファンのこともとても大事に
思っておられて、日本での展覧会もとても好意的に思ってらっしゃるようで、とても嬉しかった
です。いつかアメリカに行って本物の『クリスティーナの世界』を観てみたいものです。残念
ながら今回は完成作のテンペラ画は観れませんでしたが、製作過程の素描は水彩画が観れたのは
良かったです。実は、『クリスティーナ~』が何故そんなに評価されている絵なのかいまひとつ
わかっていなかったのですが、彼女の置かれた環境や身体的事情などの解説を読んで、あの絵の
意味が初めて理解できました。あの不自然なまでの細い腕にもあの姿勢にもちゃんと意味があった
のですね・・・。ワイエスのクリスティーナへの思い(恋ではない)が画に溢れている絵だと
思います。ああ、やっぱり、本物が観たい。そうだ、アメリカへ行こう!・・・って出来たら
最高なんだけどなぁ。


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『幻影』 習作 水彩



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『幻影』 テンペラ



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『粉挽き小屋』 とてもワイエスらしい風景画。綺麗ですねぇ・・・うっとり。 



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『冬の水車小屋』 冬の凍てついた空気が画面から流れ出して来そうです。 



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『三日月』 個人的にとても気に入った一枚。三日月とモミの木の対比が素敵^^



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『鉄兜(「松ぼっくり男爵」のための習作)』 水彩 習作とは思えない勢いがあって細密な筆致に
圧倒されます。



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松ぼっくり男爵』 テンペラ タイトルがお茶目な感じでいいですよね(笑)。



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クリスティーナの世界 習作 水彩



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クリスティーナの世界 テンペラ 今回来てませんが、一応画像を載せておきます。



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『昨夜』 これも好きでした。鹿(?)の表情がなんだか愛嬌があって可愛い^^




ちなみに一番上のポスターの画像は『火打ち石』。岩の形が火打ち石に見えたからこの
タイトルがついたそう。確かに・・・。しかし、外国にも火打ち石ってあるんですね。なんか
仏壇の前でかちかちやるイメージなんで・・・あれ、想像力貧困すぎ?^^;;




ワイエスの創作過程がわかってとても興味深い展覧会でした。素描が多いのでたいしてファンじゃ
ない人にはちょっと見ごたえがないかもしれませんが、ファンにとってはワイエスの絵をより
深く知ることが出来る有意義な展覧会だといえるのではないでしょうか。お近くの方は是非
足を運んでみて頂きたいです。



~12月23日(火・祝)まで。