宮部みゆきさんの「英雄の書 上・下」。
スポーツも勉強も出来て、人気者だった兄・大樹。小5の友理子にとって自慢の存在だったそんな
兄が、ある日学校で同級生を刺して逃亡してしまった。兄の部屋に残された本から、兄が『英雄』
に取り憑かれて罪を犯したことを知った友理子は、兄を救う為、物語の世界へ飛び込む。額に紋章
を授かり<印を戴くもの(=オルキャスト)となった友理子はユーリと名乗り、しゃべる辞書の
アジュ、ユーリの従者となった無名僧のソラ、<狼>と呼ばれる戦士のアッシュと供に兄を救う
手がかりを探し始めるが――毎日新聞の好評連載、待望の単行本化。
兄が、ある日学校で同級生を刺して逃亡してしまった。兄の部屋に残された本から、兄が『英雄』
に取り憑かれて罪を犯したことを知った友理子は、兄を救う為、物語の世界へ飛び込む。額に紋章
を授かり<印を戴くもの(=オルキャスト)となった友理子はユーリと名乗り、しゃべる辞書の
アジュ、ユーリの従者となった無名僧のソラ、<狼>と呼ばれる戦士のアッシュと供に兄を救う
手がかりを探し始めるが――毎日新聞の好評連載、待望の単行本化。
宮部さんのファンタジーとはあまり相性がよろしくないのですが、新刊と聞いて内容もわからず
予約。蓋を開けてみたら直球のファンタジー小説だったという^^;そりゃ、いかにもなタイトル
だけどさぁ・・・。読む本が山積みの現在、もしファンタジーと知っていたら予約しなかった
かも。上下巻だし。とはいえ、主人公は小学生だし、字も結構大きめだし、ページ数もそれほど
多くないので上巻は割とさくさく進めました。思ったより早く読み終わるかな~と思ったのですが、
下巻ではあまりまとまった時間が取れなかった上に、説明描写がわかり辛く、少々苦戦。宮部作品は
いつもリーダビリティがあるので長い作品でもさほど冗長だと思わずに読みきってしまうのですが、
本書は全体的な読みにくさに躓いて少し時間がかかってしまいました。内容的には二日で読める
ような作品だと思うのですが^^;
予約。蓋を開けてみたら直球のファンタジー小説だったという^^;そりゃ、いかにもなタイトル
だけどさぁ・・・。読む本が山積みの現在、もしファンタジーと知っていたら予約しなかった
かも。上下巻だし。とはいえ、主人公は小学生だし、字も結構大きめだし、ページ数もそれほど
多くないので上巻は割とさくさく進めました。思ったより早く読み終わるかな~と思ったのですが、
下巻ではあまりまとまった時間が取れなかった上に、説明描写がわかり辛く、少々苦戦。宮部作品は
いつもリーダビリティがあるので長い作品でもさほど冗長だと思わずに読みきってしまうのですが、
本書は全体的な読みにくさに躓いて少し時間がかかってしまいました。内容的には二日で読める
ような作品だと思うのですが^^;
ゲーム大好きな宮部さんらしく、終始RPGゲームをやっているかのような感覚の作品でした。
主人公の友理子を中心に、一人づつ仲間(パーティ)が増えて行って、ヒロキ(兄)という
最終目的に向かって旅をして行くという王道のファンタジー。ただ、展開自体は非常にシンプル
なのですが、異世界側の説明がかなり判り辛く、状況を把握しきれないまま読み進めてしまった
ところがあって、いまひとつ作品世界に入って行けなかったです。
主人公の友理子を中心に、一人づつ仲間(パーティ)が増えて行って、ヒロキ(兄)という
最終目的に向かって旅をして行くという王道のファンタジー。ただ、展開自体は非常にシンプル
なのですが、異世界側の説明がかなり判り辛く、状況を把握しきれないまま読み進めてしまった
ところがあって、いまひとつ作品世界に入って行けなかったです。
多分、ゲーム好きの人(特にRPG系の)は楽しめる作品なのではないかと思うのですが、私は
ちょこちょこ腑に落ちない点があって、楽しみきれなかったです。ファンタジーというジャンル
から見ても、どうも設定のツメが甘いように思う。どこがどうって説明するのも難しいのですが^^;
例えば、物語の世界という大きな設定があって、無数の物語が紡がれている中で、アッシュの住む
ヘイトランドの物語だけがクローズアップされて下巻の中心になってしまい、結局その領域
(リージョン)だけでヒロキの結末まで引っ張ってしまったというのはどうなんだろう。そんなに
都合よく一つの物語だけで決着をつけていい話だったのかな。だったら、無数の物語の領域
(リージョン)があるなんて設定は意味がなかったんじゃないのか、と思ってしまった。私が
ひねくれるだけ?^^;RPGゲームだって、いろんな国を回っていろんな敵と戦った末に辿り着く
のが大ボスがいる場所っていう流れなのだから、もっといろんな領域を旅する話にした方が
面白味があったんじゃないのかな。正直、ヘイトランドの大陸戦争のくだりとか、退屈なだけ
だったし。その変端折って、もっと違う冒険要素を入れて欲しかった。
ちょこちょこ腑に落ちない点があって、楽しみきれなかったです。ファンタジーというジャンル
から見ても、どうも設定のツメが甘いように思う。どこがどうって説明するのも難しいのですが^^;
例えば、物語の世界という大きな設定があって、無数の物語が紡がれている中で、アッシュの住む
ヘイトランドの物語だけがクローズアップされて下巻の中心になってしまい、結局その領域
(リージョン)だけでヒロキの結末まで引っ張ってしまったというのはどうなんだろう。そんなに
都合よく一つの物語だけで決着をつけていい話だったのかな。だったら、無数の物語の領域
(リージョン)があるなんて設定は意味がなかったんじゃないのか、と思ってしまった。私が
ひねくれるだけ?^^;RPGゲームだって、いろんな国を回っていろんな敵と戦った末に辿り着く
のが大ボスがいる場所っていう流れなのだから、もっといろんな領域を旅する話にした方が
面白味があったんじゃないのかな。正直、ヘイトランドの大陸戦争のくだりとか、退屈なだけ
だったし。その変端折って、もっと違う冒険要素を入れて欲しかった。
でも、私が一番引っかかったのは別の点。
以下、ネタばれあります。未読の方はご遠慮下さい。
私が一番腑に落ちなかったのは、大樹が犯した殺人という犯罪をあまりにも軽く受け流して
しまう結末だったこと。確かに大樹はみちるを守るために罪を犯したのかもしれない。でも、
それはいじめなんかよりもずっとずっと重い殺人という大罪です。あのラストでは、その罪
について誰も深く悔いていないように思えてしまう。誰かを守る為には人を殺すのも仕方が
なかったとでも言うような結末にはがっかりしました。エピローグでみんなで別荘に行く
くだりがあるけれど、誰も大樹が人を殺した事実に向き合っていない。罪の贖罪のことも出て
こない。起きた出来事を忘れようと明るく振舞う家族。それは確かに犯罪加害者の家族にとっては
大事なことなのかもしれないけど、家族は身内が殺人を犯した事実を忘れるべきじゃない。
被害者の遺族とだってきちんと向き合っていかなきゃいけない。それが犯罪加害者の家族
の定められた運命だと思うから。
そもそも、大樹サイドの心理描写が一切出て来ないから、結局彼がどういう気持ちで人を
刺したのかがわからなかったのはどうにも据わりが悪い。その辺りの心理描写は一番宮部
さんのお得意技の筈だと思うのですが・・・本書に限っては、その心理描写の妙が発揮されて
いないのが残念でした。
しまう結末だったこと。確かに大樹はみちるを守るために罪を犯したのかもしれない。でも、
それはいじめなんかよりもずっとずっと重い殺人という大罪です。あのラストでは、その罪
について誰も深く悔いていないように思えてしまう。誰かを守る為には人を殺すのも仕方が
なかったとでも言うような結末にはがっかりしました。エピローグでみんなで別荘に行く
くだりがあるけれど、誰も大樹が人を殺した事実に向き合っていない。罪の贖罪のことも出て
こない。起きた出来事を忘れようと明るく振舞う家族。それは確かに犯罪加害者の家族にとっては
大事なことなのかもしれないけど、家族は身内が殺人を犯した事実を忘れるべきじゃない。
被害者の遺族とだってきちんと向き合っていかなきゃいけない。それが犯罪加害者の家族
の定められた運命だと思うから。
そもそも、大樹サイドの心理描写が一切出て来ないから、結局彼がどういう気持ちで人を
刺したのかがわからなかったのはどうにも据わりが悪い。その辺りの心理描写は一番宮部
さんのお得意技の筈だと思うのですが・・・本書に限っては、その心理描写の妙が発揮されて
いないのが残念でした。
ソラの正体に関しては想像通り。結末は友理子にとってはあまりにも苦い。小学5年でこんな
バッドエンドを経験させるとは・・・宮部さんも人が悪いなぁ。でも、この経験で友理子は
驚く程成長を遂げました。<狼>を受け継いだ彼女には、これからもっともっと試練が待ち受けて
いるのでしょうけれど、彼女なら乗り越えて行けるでしょう。
バッドエンドを経験させるとは・・・宮部さんも人が悪いなぁ。でも、この経験で友理子は
驚く程成長を遂げました。<狼>を受け継いだ彼女には、これからもっともっと試練が待ち受けて
いるのでしょうけれど、彼女なら乗り越えて行けるでしょう。