ミステリ読書録

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結城充考/「プラ・バロック」/光文社刊

結城充考さんの「プラ・バロック」。

埋め立て地の冷凍コンテナから、14体の凍死体が発見された。整然と並んだ死体は、誰の、
どんな意図によるものなのか?神奈川県警機動捜査隊に所属する女性刑事・クロハは、虚無感と
異様な悪意の漂う事件の、深部に迫っていく…。圧倒的な構成力と、斬新なアイディアを評価され、
選考委員満場一致で新人賞を受賞した期待の新鋭、渾身の一撃。第12回日本ミステリー文学大賞
新人賞受賞作(あらすじ抜粋)。


あらすじ抜粋ですみません。でも、このあらすじ読むと、めちゃくちゃ面白そうな作品に感じ
ませんか?選考委員満場一致、圧倒的な構成力、斬新なアイデア・・・大絶賛じゃないですか。
そもそも、日本ミステリー文学大賞なんて賞、今まで全く気にしたことなかったんですが。
大賞受賞者リストを見ると錚々たるメンバーが受賞されているのですね。で、新人賞はというと
・・・ほとんど知ってる作品がない^^;唯一読んでいたのが第六回新人賞受賞の三上洸さんの
「アリスの夜」。でも、これは多分賞をとったとか全く意識せず、ただタイトルの「アリス」に
惹かれてなんとなく手に取った覚えがあります。しかも、すでにどんな作品だったか全く思い出せない
という・・・^^;それなりに面白かったような気はするけど。あと、読んでないけど話題になった
海野碧さんの「水上のパッサカリアがありますね。そうか、これって、この賞の受賞作だった
のか~(今更)。選考委員もなかなかに錚々たるメンバーが揃ってます。本書の回(第12回)では、
有栖川さんや若竹さんが入ってるじゃないですか!と、読んだ後で記事書くに当たって調べて
知りました(苦笑)。

で、これだけ派手な惹句をつけた本書ですが、読む前に他の方の感想をちらほら見てしまって
いたので、正直あんまり期待しないで読んだため、それが功を奏したのか、思ったよりは面白く
読めました。ただ、はっきり云って、完全に煽りすぎだと思います。圧倒的な構成力、斬新な
イデアってのは全く読んでいて感じなかったですね。確かに、冒頭の冷凍された14体の死体
ってのは魅力的な謎の提示だと思いますが、斬新だったのはそこまで。大量の死体の真相は全く
もってがっかりさせられるものでしたし、文章は上手くないし、キャラ造形は類型的で薄いしで、
一体どこを選考委員が絶賛したのか私にはよくわからなかったです。まぁ、とにかく文章の
まずさには辟易しました。細切れの文章で読みやすいのは確かだけど、読み始めてすぐに出て
来てうんざりしたのが、p22の文章。

被害者は事件の一週間前まで精神科へ通院していて、鬱病と診断されていたという。
賃貸契約したその日の夕刻、被害者は部屋へ入居した。
被害者の血液から、バルビツール酸系睡眠薬が検出された。

この三行の間に、『被害者』って言葉が三箇所も出て来る。その後でも何度か出て来るし。
短い文章の間に、同じ用語が頻出するってのはどうも読んでいて鬱陶しく感じてしまう。私も
読書記事書く時、ついついやっちゃうんですけどね・・・^^;;
もともと、ラノベで書いてた人らしいので、ぶつ切りのラノベ調文章が染み付いているのかも
しれないけど、会話文も酷かった。特に、クロハと姉の会話。この他人行儀は何なんだ?と思いました。
姉の人物造形ももっとしっかり作って欲しかった。人物造形に関しては全員にいえることですけどね。
特にカガやらサトウやらハラやら、最後まで人物像がぼやけてはっきりしないままで、何の為に
出て来たのかって感じでした。
そもそも、主要登場人物の名前をカタカナ表記したこと自体が意味不明。何らかのトリックでも
あるのかと思ったらそうでもないし。被害者サイドの方は途中で漢字表記になったり、統一性も
ない。単に読みにくくなっただけっていう、意味のない作者の拘りにがっかりしました。
まぁ、そんなこんなで、文章とキャラ造形のまずさに何度も挫折しかけたのですが、中盤を
超えた辺りからはそれなりに物語が動いて面白く読めるようになりました。集団自殺の首謀者と
クロハとの攻防もそれなりに緊迫感があって読まされましたし。ただ、クライマックスで突然
ある人物が出て来て、おいしい所を全部持ってって、クロハの存在意義を無にしてったのには
唖然としましたけど^^;あまりのあっけない幕切れに、一気に毒気を抜かれた気分でした。
でも、最悪の事態だけは避けられてほっとしました。あそこで○○が死んでいたら、読後感は
最悪だったでしょうね。

結局、大量自殺を画策した犯人が、どうやって被害者たちに睡眠薬を飲ませて冷凍コンテナに
誘導したのか、とかそのあたりの手口は明かされないままなのでちょっと消化不良でした。
死んだ後で○○○になれるって、そんなに魅力的なことかなぁ??あと、死に損なった
自殺者の一人が出入りしていた自殺サイトを探すにあたって、『ペイン』という名前といくつかの
書き込みだけで本人だと断定している所に疑問を感じました。HNなんでいくらでもつけられるし、
管理人サイトに確認した訳でもないのに、なんで?と腑に落ちない気分でした。

うーん、こうして感想を書いてみると、自分で思ったより黒べるよりの記事になっている気が・・・。
読み始めた時は確かに「やばそう」って思ったんだけど、途中からは案外面白く読めたと
思ったんだけど^^;あれれ?^^;;
ところで、クロハの姉の子供って、ほんとにアイって名前なんでしょうか。男の子なのにアイ?^^;
私はてっきりアイは愛称で(ダジャレじゃないよ^^;)、本名はアイノスケとかアイタとか
アイイチロウ(笑)とかなのかと思ってたんですが、最後まで明かされないままでした。

まぁ、正直二作目を読むかどうかは微妙ですね・・・。世間の評判次第、かも。