ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

結城充考/「エコイック・メモリ」/講談社刊

イメージ 1

結城充考さんの「エコイック・メモリ」。

動画投稿サイトに忽然と現れた、四つの映像。不鮮明なその映像には、『回線上の死』という
タイトルがつけられ、私刑によって誰かが殺されるまでが映し出されていた。悪戯か?それとも
本物なのか?管理官から三日間の捜査を命じられたクロハは、映像の中にある奇妙なズレに
気付き始める…。圧倒的な緊迫感と、予想を上回る展開。新鋭、渾身の長編警察小説、
堂々の完成(あらすじ抜粋)。


日本ミステリー文学大賞新人賞を獲ったプラ・バロックの続編。女刑事のクロハ再び、です。
前作は、面白かったけれども瑕疵が鼻について酷評に近いような、なんだか扱いに困るという
感じの微妙な感想だったので、二作目はどうしようかと思ったのですが、続編ということで
なんとなく気になって手にとってみました。
どうやら、世間的な評価は大分良いみたいなのですが・・・うーん、うーん・・・。私にはあんまり
合わなかったです・・・。前作でもすごく文章的なところで引っかかりがあったのですが、今回も
そこがネックになったように思います。前作の記事でも挙げたのですが、短い文章の中に同じ
主語が何度も頻発して出て来ることが多くて、すごく文章がくどく感じてイライラしてしまいました。
あまり意味のないキャラのカタカナ表記も前作同様。敵側と警察側で区別したいからなのかなぁ
とも思いきや、ラストで出て来る敵方のサイもカタカナ表記。そうかと思えば、クロハに敵対心を
燃やす女記者・鼎だけはすべての表記が鼎計(かなえ・けい)と漢字でしかもフルネーム表記。
この統一感のなさは一体なんなんでしょうか・・・。このあたりの文章のブレが気になって、
なかなか読んでいてリズムに乗ることが出来ませんでした。肝心の事件の方も全体的にだらだら
していて、クロハの言動もいちいち回りくどさを感じてなかなかページが進まなかったです。
そのうえ、そこまで引っ張った挙句の犯人との対決があまりにも呆気無さすぎるし。
終盤の収拾のつけ方は前作とほぼ同じ展開のような・・・(といっても、前作の内容はすでに
かなりうろ覚え状態になっているのですが^^;)。もともと警察ものが苦手なせいもあって、
なんだか終始乗り切れずに終わってしまいました。若い女刑事があそこまで男社会の警察機構
の中で評価されているっていうのもなんだか説得力が感じられなかったしなぁ。
いくら実績をあげても、女性ってだけで鬱陶しがられる世界って感じがするんですが・・・
これは私の偏見かな^^;でも、冒頭に出て来た犯人射殺事件のような出来事があったら
それだけでもっと肩身が狭くなるんじゃないのかな・・・撃った方のアサクラのような状況が
なぜクロハには起きないのか、彼女をそこまで警察が守ることがどうも納得いかなかったです。
そこまで実力を買われていたということなのかもしれませんが・・・。

前作で活躍したキャラもちょこちょこと顔を出すのはうれしかったのですが、それぞれ本当に
ちょっとだけしか出てこないので、イマイチ出て来る必然性みたいなものは感じられなかった
ですね。特に、キリとの関係はもうちょっと本作でも掘り下げて欲しかったです。前作で何で
出て来たのかわからなかったカガの方がまだ活躍してたような^^;

残念だったのはラストのアイとの結末。まぁ、本当の親でもないクロハが勝つのはよっぽどの
どんでん返しでもないと無理だとは思っていたのだけれど、それにしても呆気無さすぎ。
相手とクロハの立場を考えれば当然の結果でもあるのだけど、あそこまでクロハのアイへの
強い想いを作中で小出しにしていただけに、なんだか拍子抜けの結末にがっかりしてしまいました。
クロハが本当に幸せになれる日は来るんでしょうか・・・。このままアイが彼女のことを忘れて
しまったら切ないです。容易に会わせてもらえないでしょうしね・・・。

とにかく長くて、読んでも読んでもなかなか終わりが見えなかったので、ようやく読み終えた後には、
どっと疲労感が襲ってきました。
警察ものが好きならそれなりに楽しめる作品だとは思いますけどね。
・・・私はもう次はいいかな・・・^^;