ミステリ読書録

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新世紀「謎」倶楽部/「EDS 緊急推理解決院」/光文社刊

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新世紀「謎」倶楽部「EDS 緊急推理解決院」。

新宿副都心に開設された「EDS緊急推理解決院」。警察では対応しきれない難事件や不可解な
謎を、市井の名探偵の知力と名推理によって早期に解決しようという施設だ…。豪華執筆陣9人
が参加した、本格ミステリー合作長編(あらすじ抜粋)。

<院内編成>
石持浅海:院長室
加賀美雅之:怪奇推理科
黒田研二:スポーツ推薦科
小森健太朗:外国人推理科
高田崇史:歴史推理科
柄刀一:不可能推理科
鳥飼否宇:動物推理科
二階堂黎人:小児推理科
二階堂黎人:受付
松尾由美:女性推理科


久々に新世紀「謎」倶楽部の企画もの。「ルピナス」目当てで行った中央図書館で見かけて、
そういえばコレ読み逃してたなーと思って借りて来ました。出た時読みたいと思ってたんだけど、
開架で見かけなくてそのまま存在忘れてしまってました。まぁ、ここから出た作品全部読んでる
訳でもないんだけど。寄稿作家がなかなか豪華。加賀美さんだけ多分初読み(デビュー作は
確か読もうか迷って結局読まなかったような・・・)。

犯罪撲滅運動の一貫として、警察では対応しきれない難事件や不可能事件を市井の名探偵たちの
力で早期解決に導こうという意図のもと創設された『EDS 緊急推理解決院』を軸にした合作集。
なんか、蝦蟇倉市のアレとちょっと被ってますね(苦笑)。
編成を見ると、それぞれの作家が、自分の作風を生かした科を担当しているのがわかりますね。
リレー小説ではなく、それぞれの科で起きる事件を個々に描いて行く形式。アンソロジー
違うのは、それぞれの作品の章がバラけて収録されているところ。シーンごとに切り取って
少しづつ描かれるカットバック方式とでもいいましょうか。一つの事件を一気にまとめて
読めない分、少し読みにくさはありました。他の話を読んでるうちに、最初の話の細かい部分を
忘れちゃいそうになったり。私はまだ一気に読んだからいいけど、何日もかけて読む人なんか
だと余計に混乱しそう。

ただ、各作家のキャラクターが一つの施設に共存していると思うとなかなか楽しい。そんな
バカな、とツッコミたくなるところも多いのですが、純粋に企画モノとしては面白い趣向だと
思います。個人的には黒田さんのぜにーちゃんと鳥飼さんの葉古氏との再会は感涙ものでした。
オカマのぜにーちゃん、相変わらず強烈な個性を発揮してくれてます。葉古氏は昆虫探偵
(○キブリ)ではなく、ちゃんと元の人間の姿で登場しております(笑)。

なかなかどの話も面白かったのですが、巧いな、と思ったのは意外にも(?)石持さん。冒頭から
大風呂敷を広げた設定で、石持さんのパートだけ異様に緊迫感があって他の作品からの乖離が
激しいのですが、ラストできちんと収拾がついていて感心しました。アンカーとしての落とし
所も巧いですし。

あと、加賀美さんのやつもなかなか面白かった。真相は完全にバカミス入ってますが・・・しかも
相当気持ち悪い^^;でも、怪奇現象が論理的に解き明かされるこういうタイプの作品は好きです。

作品に寄稿はしてないけれど、北森さんの蓮杖那智先生の名前が出て来たり、東川さんの烏賊川市
シリーズの鵜飼杜夫が石持さんの作品にゲスト出演していたりと、嬉しいリンクもちらほら。
それぞれの作家の世界が繋がっていて、探偵同士が会話してたりするのはちょっと不思議な
気持ちになりますが、読んでいて楽しかったです。
二階堂さんのぼくちゃん探偵はなんだか浮いてる感じがしましたが^^;どうもこのシリーズは
ほのぼのを狙っているのだろうけど、私のツボからははずれてるんだよなぁ^^;渋柿探偵の後釜
が水乃サトルってところにもニヤリ。

そういえば、高田さんの作品だけは短編集で既読でした。これに収録されてた作品だったのかーと、
読んで始めて気付きました^^;短編集では全部の章がまとめられて一作の短編になっていたので、
バラバラに読むとまた違った印象がありましたね。大伴黒主の和歌の謎はさすがでした。


各作家の作品の間にもう少しリンクがあったら良かったかな、という気はしましたが、個々の
作品の解決編がなかなかしっかり読ませるものが多かったので、全体的には愉しめました。
ちょっとごちゃごちゃした感じは否めませんけれど。でも、こういう企画は作家たちのお祭り
みたいで楽しいですね。
この新世紀「謎」倶楽部、最近は全く活動してなさそうですが、どうなってるんでしょうか。
また面白い企画で楽しませて欲しいものです(せっかく参加メンバーが豪華なのだからね)。