ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小島正樹/「扼殺のロンド」/原書房刊

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小島正樹さんの「扼殺のロンド」。

その事故車は工場の壁にぶつかってたわみ、ドアが開かなくなっていた。中には男女。女は腹を
裂かれ、男は無傷のまま、死んでいた。直前にすれ違ったドライバーはふたりとも生きていたと
証言、さらに男の驚くべき死因が判明して捜査は混迷を深めた。しかし事件は終わらない。第二、
第三の事件が追い打ちをかける―新世代トリックメーカーが放つ渾身の一撃(あらすじ抜粋)。


時間がなくてあらすじ抜粋です。すみません^^;ようやく回ってきた小島さんの三作目。
その前に『十三回忌』読もうと思っていたのに、順番がまたもズレてしまった^^;なんか、
出て来る探偵とか刑事がシリーズキャラっぽかったのですが、『十三回忌』と繋がってるとか
ないですよね?(二作目の『武家屋敷~』と繋がってないのはわかったので^^;)

全体的には『武家屋敷~』よりはすっきりしたかな?あれはほんとに盛り込み過ぎってくらい
てんこ盛りだったので^^;こてこての本格の割にはキャラや会話がコミカルなのでテンポよく
読み進められて楽しめました。提示される謎もなかなかに個性的で魅力がありましたし。特に、
車の中で死んでいた男女のカップル、女は腹を切り裂かれて内蔵が取り出され、男は高山病
に罹って死んでいたという、なんとも不可解な状況。二重の密室というのも本格好きには
たまらない設定だし。それに、その後に続く殺人も奇妙な状況ばかりで、一体どう収拾つける
のかさっぱりわからないまま謎解きに突入してしまいました。探偵役の海老原の謎解きを
読んで何度も目からウロコが・・・ただ、サト江殺害の状況はいまいち頭に状況が思い
浮かばなかったのですが・・・こういうのは図とか映像にして欲しいと思ってしまう理解
能力のない私(ミステリ好きとして致命的なのだけれど^^;;)。トリック自体は一歩
間違えるとバカミスのような気がしなくもないのですが。本当にこんなの成功するのかなぁ?
とついつい疑問は覚えてしまった。密室にする必要性もさほど感じられなかったような。
でも、車の中の男女の死体の謎には感心しました。女の胃腸が抜き取られていた理由も
納得出来たし、男の高山病の謎もなるほど、と思えました(実際ほんとにそういう状況に
なるのかどうかはわかりませんけど^^;)。順之助の死体が突如現れた理由も面白かった。
ある人物の、ある身体的特徴に関しては海老沢に指摘される前に気付いてましたが(でも
推理は全く出来なかったので意味なし)。

全体的には本格好きとしてはかなり楽しめたのですが、ラストのどんでん返しによって
思った通りの犯人だったのが何とも・・・。どう考えても、その人物の言動ってなんか
アヤシイよなぁと思っていたので、やっぱり・・・って感じでした。ただ、その前に浮かび
上がった人物だとすると、犯行に疑問を覚えるところも多いにあったので、その点では
溜飲が下がったとも云えるのですが。犯行動機としては、まぁ納得出来ないことはないの
ですが、なんとも後味の悪さを感じる犯罪と犯人像でした。

探偵役の海老原と刑事の小沢の会話がコミカルで笑えるところは良かったです。特に、リンゴ
ちゃんを巡る二人の攻防がしつこい位に繰り返されるところとかニヤニヤしちゃいました。
リンゴちゃんに一体何したんだ、小沢よ・・・。海老原、小沢と笠木の母との関係なんかも
ほののぼしてて好きでした。

サト江殺害の犯行とか、海老原のキャラ造詣とか、ちょっと島田さんっぽいかな~と思いながら
読んでました。海老原のちょっとハイではた迷惑なキャラがどうも御手洗さんと被って仕方
なかったです。
でも、調べてみるとこの方、島田さんと共作したりしてるんですね。少なからず影響受けて
いるのは間違いないようです。

今回は語尾に変な言葉(^^;)もついてない分、純粋に作品が楽しめて良かったです。
本格好きにはなかなかに楽しめる一冊でありました。うん。やっぱり早く『十三回忌』も読もう。