ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

道尾秀介/「プロムナード」/ポプラ社刊

イメージ 1

道尾秀介さんの「プロムナード」。

著者初のエッセイ集。デビューから書き綴った54編のエッセイ+17歳の時に描いた絵本と
19歳の時に書いた戯曲を同時収録。


我らがミッチー、初のエッセイ集。月の恋人とほぼ同時に発売されましたが、装幀はこちらの方が
100倍素敵ですね(酷)。文章はエッセイにしては非常に真面目なのですが、書かれてる内容は
案外とぼけてたり抜けてたりで面白い。道尾さんのいろんな面が伺えてとても楽しく読めました。
結構変な人なんだなーって思うところと、やっぱり基本は生真面目で人がいいんだろうなって思う
ところといろいろでした。一つのモノに対する考え方とか感性がやっぱり普通とはちょっと違うかな、
と感じました。
月の恋人』読んだばかりだったので、アメンボのくだりとか花火のくだりとかにはニヤリ
としました。他にも、エッセイに書かれている実体験が、結構小説に反映されているな、と
感じるところは多々ありました。
基本的に、道尾さんはどんな物や事に対しても真摯に向きあう人なんだろうな、と思いました。
もちろん、小説に対しても。『ジャンル分け』に対する切な願いには、ついついミステリー
を期待してしまい、道尾さんが嫌がっている「ミステリーとしては~(中略)だけど、物語としては
面白い」というような感想を書いてしまう人間として、耳が痛かったです・・・(ごめんなさい)。
やっぱり、ミステリ好きとしては、ついつい道尾作品は色眼鏡で見てしまうところがありますね。
道尾さんは、やっぱりジャンルを超えて面白いものを書きたいと思っているのね。ミステリー
ばっかりを期待してしまう私は困った読者のひとりなんでしょうね・・・。同じような人は
多いと思うけどね。

取り上げたいエピソードはたくさんあるのですが、私が好きだったのは、高校生の時のバイク
一人旅のくだり。金田一耕助の事件現場を巡る為に岡山まで行って、『本陣殺人事件』の一柳家
モデルになった家がある筈と信じて歩きまわり、挙句古い一軒家に辿り着きます。そしてその表札
には『横溝』の文字が・・・!狂喜乱舞する道尾さんでしたが・・・オチがなんとも抜けていて、
その事実を知った時の道尾さんの表情を思い浮かべて吹き出してしまいました(笑)。

飼っていた猫やシマリスとの思い出話にはほのぼのしつつ切ない気持ちに。切ないといえば、
間に挟まれている、道尾さんが17歳で初めて描いた絵本『緑色のうさぎの話』がなんとも
切なくてやるせないお話で、泣きそうになってしまった。絵とか文字とか、17歳にしては
拙いのだけど、ストーリー作りの巧さがそれを補ってる。一人ぼっちのうさぎが、仲間と打ち
とけて、ようやく幸せを手に入れた、その途端に起きた悲劇。自分の身体がみどりであるが故に
取り残されてしまったうさぎの最後の行動が切なくて可哀想で。これ、ちゃんとした人に絵を
描いてもらって出版したら、いい絵本になるんじゃないかなぁ。仲間といる楽しさを知って
しまったうさぎがこれから生きて行くのは辛いだろうな・・・。
その後に収録されている戯曲の方はあんまりよくわからなかったけど^^;作者自身がオチの
意味がわからない作品を理解しろって方が無理です^^;

結構見栄っ張りだったりとか、おっちょこちょいだったりとか、意外な面が伺えるエピソードも
多かったのですが、一番意外だったのは高校一年の時の風貌。金髪ロン毛に破れたジーンズ、
腕には文字が彫ってあって耳に安全ピンが刺さってる・・・こんな高校生嫌だー^^;ってか、
こんな風貌の高校生が好きな子にあげるものがお手製の押し花しおりってとこがなんとも
微笑ましいというか、滑稽というか・・・痛い。痛すぎる(苦笑)。そりゃ彼女もドン引きだっただろうよ。
しかもあげた後でダニがうようよ湧いたって!!完全に迷惑以外の何ものでもないですね(苦笑)。
きっと、彼女は捨てたら何か仕返しされると思ったんだろうなぁ・・・可哀想に^^;;『骸の爪』って
そのエピソードからヒントを得たんじゃないでしょうね^^;

十二支シリーズ、結構題名で行き詰ってるんだなってのも意外でした。自分で自分の首絞めて
たんだねぇ。でもあと四つなんですね。ゴールは近い。ガンバレ、ミッチー。


作品とは違う、素顔の道尾さんの姿が窺い知れて、とっても楽しく読めるエッセイでした。
ますます道尾さんのことが好きになったよ。