ミステリ読書録

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有川浩/「シアター!2」/メディアワークス文庫刊

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有川浩さんの「シアター!2」。

「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」―鉄血宰相・春川司が
出した厳しい条件に向け、新メンバーで走り出した『シアターフラッグ』。社会的には駄目な人間の
集まりだが、協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。しかし、借金返済のため団結
しかけていたメンバーにまさかの亀裂が!それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。
旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。
どうなる『シアターフラッグ』!?書き下ろし(あらすじ抜粋)。


せっかく重い腰をあげて1を読んだばかりだったので、新鮮なうちに2も読みたい!ということで、
珍しく新刊書店にて定価購入。せっかく買ったのだから、早目に読まねば!と思い立ち、私にしては
異例の早さでさっさかと読んでしまいました。今回も読みやすいしわかりやすいストーリーで、
ぐいぐいと読まされちゃいました。面白かった~。
今回は、シアターフラッグの劇団員一人一人にスポットをあてて、それぞれの個性や内面心理
を描いたことで、よりシアターフラッグという劇団や脇役キャラたちにより親しみが感じられる
ようになったように思います。劇団内の人間関係も大分本書でわかって来たように思います。
前作は、有川作品とは思えないほどラブ要素が少ないところが少々残念だったのですが、今回は
その点も大分『らしい』描写がちらほらと挟まれています。意外なところで恋愛問題が発生して
いたりして、やっぱり男女が集まると大なり小なり恋愛のもつれって発生するものなんだなぁと
思わされました(苦笑)。
個人的に楽しめたのはゆかりと小宮山の恋愛。小宮山ってこんなキャラなんだ!?とビックリ
しました。ゆかりへの想いを打ち明けた後の彼の言動にはこっちが赤面しちゃいそうでした。
でも、こういう切り出し方されたら、女としてはほだされちゃうよなー、と思いました(苦笑)。
ただ、私が1の記事で予想したような、司と千歳の恋愛関係には、ほとんど進展がなかったのが
ちょっぴり残念でした。といっても、十歳側の気持ちははっきりしましたし、二人の間にちょっと
した今後の進展を予感させる出来事はありましたけれどね。司さんがまさかあんなに人前で弱気に
なるとはねぇ。鉄血宰相にも涙ってやつでしょうか。常識人でいつでも『正しい人』って印象の
司さんも、過去にはいろんな過ちがあって、重いものを抱えているんですね。そういう面も知って、
より司兄ちゃんが大好きになりました。実際何があったのかはまだわからないけれども。
ともかく、司と千歳、この二人に関しては、次巻持ち越しってことなんでしょうね。むふふ。

あと、個々のキャラがそれぞれの悩みを抱える度に、いちいち司に相談するところが可笑しい。
なんだかんだいって、頼りにされてるんですよね。それに、相談事に対するアドバイスがいつでも
的確で的を得ているからすごい。司兄ちゃんが言うことなら、絶対だって思えちゃんだから。
基本的にシアターフラッグに潰れて欲しいと思っている人なのに、結局劇団員たちの士気を
煽ぐ結果になってたりするのが何とも皮肉です(苦笑)。挙句の果てには、弟のやらかしたヘマ
に対して率先して尻拭いをしてあげて、収益上げちゃうし。司さんって、どんな職場に行っても
絶対『デキル人』になれるんだろうなぁ。自分でそこ、認めちゃってるところも潔くてカッコイイ。
ただ、それだけに、裏では人一倍努力を怠らないだろうし、人知れない悩みを抱えたりもするの
だろうけれど。そつなく生きられる人に限って、不器用だったりするんだろうな。千歳がそういう、
司兄ちゃんの不器用なところにも気づいてあげられるといいなって思います。巧ではきっと、一生
気づかないままだろうからね(苦笑)。それに、司も、巧にだけは、そういう弱いところ気づいて
欲しくないだろうしね。

今回は、巧にもちょっぴり見せ場がありました。テアトルワルツの支配人に対する巧の決然とした
態度はかっこ良かったです。ちょっとだけ見直しちゃいました。といっても、その後の彼の行動は
到底責任者としてやっていいことではありませんでしたが。でも、彼の気持ちもわかるので、今回
は仕方ないかなって思いました。私も、支配人の言動にはムカムカしっぱなしでしたもの(怒)。
そして、巧の行動の理由を聞いた時の司兄の言葉と態度に嬉しくなりました。理不尽なことに
腹を立てる真っ当な性格にまたもシビレました・・・うーん、ほんとにいい男ですね、司さん。
その後の行動力も素晴らしいし。要所要所で司さんの魅力を再認識させられる一冊でございました。


司さんの機転のおかげで(本人にとっては幸か不幸かって感じですが^^;)、シアターフラッグ存続
が一歩現実的になりました。彼らの最終的な運命は、完結編らしい次巻で明らかになるのでしょう。
刊行を楽しみに待っていたいと思います。こりゃ、3巻も新刊で買っちゃうな、きっと・・・(これぞ有川
マジック)。