ミステリ読書録

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奥泉光「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」/文藝春秋刊

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奥泉光さんの「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」。

クワコー、海へ行く!水着とケータイを残して消えた美女。不気味なストーカーの影。日本一の
下流大学教師・桑潟幸一が事件解決に乗り出した(紹介文抜粋)。


クワコーシリーズ第二弾。今回は中編が二作収録されています。が、うち一作(しかも表題作)は
以前『オールスイリ』という企画もののミステリ雑誌で既読でした^^;

いやぁ、今回も冴えない貧乏准教授クワコーの自虐と赤貧生活&文芸部の女子大生たちとの上下関係
逆転のやり取りが可笑しい、可笑しい。
ここまで女子大生から下に見られる准教授ってのもすごいよね。でも、それを素直に受け入れて、
どこまでも自分の立場を弁えて日々を倹しく生きるクワコーの姿に感動すら覚えそうになって
しまった(笑)。

でもって、今回は期末テストのお話と、夏合宿のお話。どっちも、謎の真相はしょーもないもの
ではありましたが、一応ちゃんとミステリになってるところは素直に評価したいかな、と。
相変わらず謎を解くのはクワコーではなく、ホームレス女子大生のジンジンこと神野仁美嬢。
颯爽と現れて、鋭く冷静に謎を解くところはこの上もなくかっこいいのに、なぜか大学の敷地内
ダンボールハウスを建てて生活するホームレス・・・。このギャップが最高ですね。

今回のクワコーの貧乏料理は、ザリガニと紫蘇。タダで手に入る食材をこれほど喜ぶのは、
クワコーとテレ朝の一ヶ月一万円生活をしている芸人くらいのものじゃないでしょうかね(笑)。
なんなら、クワコーに一万円生活やってほしいくらいです(笑)。
夏合宿では、海の食材がふんだんに出て来ましたし。貧乏暮らしのクワコーにとっては、
海の幸なんて、最高のごちそうでしょうね。
それにしても、小学生にまでバカにされ、下に見られるクワコーが哀れでならなかったです・・・。
たまに、クワコーの諦めモードの自虐に切ない気持ちになるんですよね・・・ま、それが
面白いんですけど(酷)。

今回も、『スタイリッシュな生活』とは対極にあるような内容で、表紙も副題も完全に読者を
裏切ってます(笑)。
この、表紙のイケメン風青年は、前作でも思ったんですが、きっとクワコーが思い描く『妄想の中の
クワコー』なのではないかと。ドラマの佐藤隆太さんは、きっと原作のクワコーとは別物だった
のでしょうねぇ・・・(ドラマは結局一回もちゃんと観られなかったので、実際はどうだったのか
わかりませんけれど)。

このシリーズの脱力感とクワコーのキャラが大好きなので、今後も定期的に書き続けて欲しいなーと
思います。