ミステリ読書録

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大倉崇裕/「オチケン探偵の事件簿」/PHP研究所刊

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大倉崇裕さんの「オチケン探偵の事件簿」。

大学入学早々、落語にまったく興味がないのに、廃部寸前のオチケン(落語研究会)に入部させられた
越智健一(おちけんいち)。風変わりな二人の先輩にふりまわされ、キャンパス内で起きる奇妙な
事件の捜査に駆り出され、必修科目の出席もままならない中、大学は夏季休暇に突入していた。
宿題をきっちり仕上げ、前期のリベンジを誓う越智だが、学生落語選手権で優勝を狙う大学間の
抗争に巻き込まれ、次々と予想だにしない事件に直面するはめに……。単位取得が遠のいていく、
オチケン探偵の活躍を描く連作ミステリー。オチケンの運命や、いかに!?(紹介文抜粋)


オチケンシリーズ第三弾。前二作は理論社のミステリYA!シリーズからの刊行でしたが、版元を
移して再出発、ということのようです。理論社のレーベルは廃止になっちゃったんですかね。企画
してた人がいなくなっちゃったとかなのかしら。講談社のミステリランドも考案者のご逝去があって
企画立ち消え状態だもんなぁ・・・(それでも、たまーに思い出したように出てるから、遺志を
継いでくれた人がいるのだろうと思っているけれど。せめて京極さんのは出してくれー)。
まぁ、再出発とは書いたものの、更なる続編の予定はないようです。まだまだ続きそうなラスト
なんだから、もっと続けて欲しいなぁ。

前二作読んでから大分時間が経ってしまったせいか、オチケンこと越智健一君以外のキャラを
ほとんど忘れてました^^;オチケン部員の二人のことは読んでるうちになんとなく思い出した
けれど。そういえば、前の作品でも越智君は先輩たちに振り回されっぱなしだったよなぁ、と
思い返しました。しかし、こんなにたかられていましたっけね?^^;かなり理不尽な扱いを
受けているのに、なぜかそれに従ってしまう越智君のお人好しっぷりが可笑しいやら、気の毒
になるやら。もうちょっと強気に出てもいいのになーと思いながらも、そこで強気に出られない
ところが越智君の良い所なんだろうなーと納得する所も(苦笑)。まぁ、私が越智君の立場だったら、
とっくに周囲の身勝手さにキレてとっくにオチケンから逃げてると思いますね^^;せめて、一年生
にたかるのはやめてあげて欲しいよねー・・・。私が大学一年の時は、飲み会その他の費用は
全部先輩が出してくれていたけどな。ま、もちろん、私が女性だったせいもあるんで、越智君
とは大きく立場が違う訳だけれども。

今回は、『幻の男』『高田馬場と、二つのお話が入っています。『幻~』の方はミステリでは
割りとよく使われるオーソドックスなトリックながら、なるほど、と思わせるものでした。かがり
のキャラがいかにも何かありそうだったんで、疑ってかかってはいたのですけれどね。
高田馬場』の方は、トリック的には面白いのですが、成功率を考えるとちょっと無理があるかなぁ
と思わなくもなかったです。
どちらのお話も、落語がヒントになって謎が解ける、というところが落語ミステリらしくて良かった
ですね。

でも、一番面白かったのは、やっぱり越智君と周りの人間との咬み合わない会話部分。読んでて、
何度も吹き出しそうになっちゃいました。越智君の返しが最高なんだもの。真面目にとぼけてる
感じがもう(笑)。この会話センスはやっぱり、作者の落語好きから来ているのかなー。落語の
会話って、お洒落な笑いのセンスが溢れてる感じがするし。
特にオチケン先輩の中村と、学生部管理課主任の土屋と越智君の会話はいちいち笑えたな。

今回も本人の意志とは関係なく周りのトラブルに巻き込まれて、ろくに家にも帰れず、夏休みの
宿題も進まない越智君が哀れでした。彼の宿題は夏休み中に無事終わるんでしょうか・・・
それだけが心配です(苦笑)。