ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

葉真中顕「絶叫」/森谷明子「花野に眠る 秋葉図書館の四季」

どもども。今日は寒い一日でしたねぇ。
明日は更に気温が下がって、東京でも雪が降るかもしれないとのこと。
仕事なのに憂鬱だなぁ・・・(涙)。
って、雪の降る地方の方に怒られそうですね・・・すみません^^;

今回は二冊読了。
読書マラソンは、結局二冊読めずに返すことになりました。ああ、新年早々やっちゃった
なぁって感じ。うち一冊は連作短篇集で、一話目を読みきったところで敢え無く返却となりました。
結構面白かったから読み切りたかったのになぁ・・・残念。また予約し直してリベンジ
しようと思います。
そういえば、本屋大賞の候補が発表になりましたね。今回既読本は5冊。読んだのが
大賞に選ばれると嬉しいけれど。なんとなく、西さんが直木賞とダブル受賞するような
気もするなぁ。面白いらしいし。私も気になっているけど、予約乗り遅れすぎて、いまさら
予約するのもねぇ。個人的には、柚木さんの本屋さんのダイアナが上位になると嬉しい。
伊坂さんは、もう一回獲ってるからないんじゃないかな。面白かったけどさ。
さて、どうなりますかねー。


では、一冊づつ感想を。


葉真中顕「絶叫」
現在すでに本が手元にないので、間違った記事内容があったらすみません^^;
話題になっていた『ロスト・ケア』がなかなか面白かったので、二作目も借りてみました。
総ページ数500ページ以上のそこそこの長編。これに時間取られたせいで、残り二冊
読み損ねたようなものなのですが・・・でも、面白かったので、読みきれてよかったです。
途中若干長いなーと思ったところもあったのですが、リーダビリティがあるので
最後までぐいぐい読まされちゃいました。
プロローグでいきなり出て来るヒロイン鈴木陽子の死体。彼女はかなり悲惨な状態となって自宅
マンションで発見されます。そこから時は遡って本編が始まり、彼女の生い立ちや
人生が語られて行きます。彼女の死にはどんな真相が隠されているのか。少しづつ明かされる
その真実に読む手が止められなかったです。
弟ばかりを溺愛する母親との不仲、突然訪れた弟の死、残された母と娘を置いて出て行った父親。
恵まれない家庭に育った陽子は、短大卒業後は地元の企業に就職し堅実に暮らしていたが、
初恋の人と再会し、結婚して上京。しかし、その結婚生活は二年ほどで破綻してしまう。
専業主婦だった陽子は一人で生活する為仕事を探すことに。その矢先、たまたま出会った
保険外交員の勧誘に乗って、自らも保険の世界に飛び込んで行く。始めこそ順調に営業成績を
伸ばしたものの、次第に成績不振になり、あっけなく首を切られてしまう。仕事が順調だった時に
覚えた買い物癖がアダとなり、無職の陽子に残されたのは借金だけとなる。そこから、彼女の人生は
どんどん転落していき、ついには犯罪に手を染めることに・・・というのが大筋。

平凡だった陽子がなぜ死体となって発見されるようなことになったのか。彼女の絵に書いた
ような転落人生は、誰にでも起こり得るようなリアルさがあって、非常に怖かったです。
保険外交員時代の経験も、『保険の営業の仕事をしている人間は友だちを無くす』と言われている
所以がよくわかりました。私は友だちからこういう勧誘された経験はないけど、久しぶりに
旧友から電話がかかった来たら保険の勧誘だった、なんて経験談は何度も聞いたことがありますから。
借金まみれになってるのに、それでもまだ母親に仕送りしようとする神経は、ちょっと理解出来なかった
です。意地なのだろうけど、あんなに邪険に扱われて酷い仕打ちを受けていたのに。親は選べない
とは言うけれど、ほんとに陽子は両親に恵まれなかったと思う。彼女がもう少し親から愛情を受けて
育っていたら、その後の人生も変わっていたのじゃないのかな・・・。
借金の返済に窮した彼女は、結局お水の仕事を選ぶ。この辺りも、判で押したような人生ですね。
平凡なOLが足を踏み外すきっかけになるのは、やっぱりお金。
そして、最終的に手を染めた犯罪も、お金がらみでした。保険外交員の仕事の経験が、彼女の
人生を更に貶めて行く・・・この辺りの絡め方も巧い。次第に明らかなって行く彼女の犯罪は、
ついこの間実際に世間を騒がせた事件とも重なりました。あの事件の犯人と違うのは、陽子には
協力者がいたって所ですが・・・。その緻密な犯罪の内情は、実際に起きてもおかしくない
くらいリアルで真に迫っていました。

陽子の人生を振り返る記述の時、彼女に『あなた』と呼びかける語り手の存在がこの作品のキモ。
最後にその人物の正体が明かされた時、あっと言わされました。終盤に明らかになる、すべての
事件の真相にも驚かされましたし。完全にミスリードされていたなぁ。終盤読んでいて、
母親ってどうなったのだろう、とずっと疑問を覚えていたのだけど・・・まさか、ああいう
からくりになっていたとは。きちんと、父親のその後にもフォローがあったし。読み終えて、
鈴木陽子という平凡な女性が、いかに強かな人間であったかに気付かされて唸らされてしまい
ました。新たなダークヒロインの誕生とも云えるような。凡庸な外見に騙されると痛い目を見る
という、典型的な例じゃないでしょうか・・・。何気なく登場する喫茶店の女店主が最後に
ああいう役割を担っているとはね。いやはや、騙されましたねぇ。
全体的に、細かい伏線の張り方が素晴らしかったです。
新人ながらに、予約数がかなり多かったのも頷けますね。結構話題になっている作品なのかな?
ミステリーとしても秀逸ですが、社会や家族の問題などもたくさん盛り込んでリアルさを重視した
重厚な人間ドラマになっているところが非常に読み応えがあって良かったと思います。
今後の作品にも多いに期待したいですね。


森谷明子「花野に眠る 秋葉図書館の四季」
とても好きな作品だった『れんげ野原のまんなかで』の続編。れんげ野原の真ん中にある秋葉
図書館を舞台にした日常の謎系ミステリーで、ほのぼのした作風が非常に好みだったのですが・・・
今回は、死体が登場して、若干不穏な空気が漂うところが前作とはちょっと違いました。ただまぁ、
その真相はそこまで不穏なものでもなく、どちらかというと切なくやるせないものでしたが。
利用者のちょっとしたヒントから本を探し出す司書たちのレファレンスのくだりなんかは、
やっぱりこのシリーズらしい楽しさがあり、嬉しくなりました。司書さんがレファレンスするのって、
探偵が謎解きをするのと似てますよね。提示された少ないヒントから、正解を導き出さねば
ならないのだから。その過程は、すごく読んでいてワクワクしちゃいます。自分もやってみたく
なったりね。
しかし、前作を読んだのがかなり昔のことなので、キャラとか秋葉図書館の設定とかほとんど
忘れていたのがちょっと痛かった。秋葉さんのキャラとかも全然覚えてなかったし^^;
辛うじて文子のキャラは覚えていたけど、能勢さんや日野さんや佐竹さんのキャラもすっかり
忘れてました。前作を軽くでもおさらいしてから読めば良かったなぁ。
でも、原っぱの真ん中にあって、四季折々の自然を感じられる秋葉図書館の雰囲気はやっぱり
とても好き。こんな素敵な場所にあって、こんな素敵な司書さんたちが勤めている図書館が
あったら絶対通っちゃいますね。
そういえば、一作目の『れんげ野原~』の記事を書いた時、文子さんを私のイメージで読んだ
と言って下さったブロ友さんがいらして、すごく嬉しかったんですよねー。司書はいまでも
私の一番憧れの職業なので。でも、文子さんみたいに幅広い本の知識はないし、能勢さん
みたいな鋭い推理力もないから、きっと彼らのような優秀な司書にはなれないだろうな^^;
今回も連作短篇形式を取ってはいますが、全体を通した謎解きも入っているので、長編として
読むことも出来る作品となっています。
個人的には死体が出て来るようなシリアスな内容になるよりは、図書館内で起きるささやかな
日常の謎を解決するだけの前作の方が作風としては好みなのだけれど。
でも、本好き、図書館好きとしては、シリーズの続編が読めたというだけでも十分満足なのでした。
また是非続きを書いて頂きたいです。