ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

飴村行/「ジムグリ」/集英社刊

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飴村行さんの「ジムグリ」。

地下世界につながるトンネルへと失踪した妻。そこには〈モグラ兵〉と称される怪しい者共が
住んでいた。男は妻を探し出すことを決意するが、そこは闇の力が満ちていて……。気鋭が描く
幻想怪奇長編(紹介文抜粋)。


飴村さん待望の新作。待ってました~!って感じだったんだけど、う、うーーーん・・・
なんとも評価に困るって内容ではありました。
いや、もう、飴村ワールド全開!!なのは間違いないのですよ。特に前半。主人公が
食品加工工場でツチヘビなる不気味な生き物をムグリ刀なる専用刃物で捌いたり、
虻狗隧道なるトンネルを超えた先の地下には、モグラと呼ばれる謎の部族が住んでいて、
モグラ兵が地下帝国を牛耳っている・・・とか、飴村さんにしか描けない世界観が
これでもかっ!ってくらいに次々出ては来るのだけれど。
なんか、主人公が地下に行ってからがねぇ・・・とっ散らかりすぎて、なんか
わけわかんないって感じで。博人の涅晶化がどうのとか、治療に関する説明が意味不明
過ぎて、途中からほとんどついて行けなくなりました・・・。っていうか、その辺りは
ほぼ読み飛ばした感じ。そうでもしないと挫折しそうだったんで^^;なので、全然
内容が頭に入らなかったです・・・。
博人が地下に行ったら、妻の美佐や博人の地下行きに巻き込まれた雪薇を捜す物語が
展開されるのかと思っていたので、全く見当違いの方向に進んで行って、面食らわされました。
一体、この物語はどこに行き着くんだろう?と、頭の中ハテナだらけで残り数ページまで
行くもさっぱりわからず。そして最後のページ・・・あー!そういうことかー!!って
感じでした。なるほど。これは『粘膜蜥蜴』のパターンだった訳なのね、と納得。
ちゃんと伏線は張ってあったのですっきりしました。まんまと、その部分のページに
戻って読み返しちゃいましたもん。全くミステリだと思ってなかったんで、ラストに
関しては素直に感心出来ましたね。
そこではじめて作者が書きたかった物語が見えて来たという訳です。読書メーター読むと
このラストが賛否両論みたいなんだけど、個人的には作者がやりたかったことがやっと
わかって溜飲が下がったので、ミステリ好きの私としては大いにアリです。それより、
そういうオチもなくあのまま博人が地下世界の生き方に染まって終わり、って方が納得
いかなかったと思う。
ただ、美佐の件はもうちょっとページ割いて書いて欲しかったなぁ。そもそも博人が
トンネルに行こうとしたきっかけが彼女だった訳だし。子どもの死因って結局何だったの
かな?書いてなかったように思うけど・・・途中読み飛ばしたりしてたから、読み落として
いるだけかもしれません^^;
あとは、雪薇がただただ気の毒だったなぁ。親切で博人を車で送ってあげようなんてしたばかりに、
あんな目に遭って。挙句、博人に・・・むむー。運が悪かったとしか言いようがないですよね・・・。
地下の闇に対する順応性がもっとあればまた違っていたのでしょうけれど。博人の人生は完全に
自業自得だと思うけど、彼女の人生はもっと輝けた筈だと思うとやりきれない気持ちになりました。

飴村さんにしては、エログロ描写は控えめで、それよりは軍関係の描写が大部分を占めて
ましたね。序盤に出て来たツチヘビの解体とかがもっとストーリーに関係してくるのかと
思って結構楽しみにしてたんだけど(笑)。
わけわかんない飴村用語もいっぱい出て来ましたねー。タイトルの意味はほんとに終盤で
わかります。ジムグリって何なんだろう?ってずっと疑問だったから、すっきりした。
ムグリ刀とかと関係あるのかな、とか思っていたからずっこけたけど^^;ああいう字を
充てるとはね。
地下帝国のいろんな設定も飴村ワールド満載。ほんと、この人の頭の中はどうなっているのやら。
天才か、はたまた単なるキチ○イか・・・(あくまでも、褒め言葉です・・・それくらい、
発想がぶっ飛んでいるってことです)。

でも、やっぱりちょっと今回は行き過ぎていたような。正直、途中からついていけなかったです^^;
また粘膜シリーズ書かないのかなぁ。