ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

秋川滝美「放課後の厨房男子 進路編」/吉田修一「犯罪小説集」

毎日寒いですね。去年から出勤が一時間早まったので、朝起きるのがツライ(><)。
朝起きた時、部屋が真っ暗なんですよ・・・。
春が待ち遠しいなぁ。
薔薇の冬剪定もそろそろしなくては。


読了本は二冊です。


秋川滝美「放課後の厨房男子 進路編」(幻冬舎
最近なぜか秋川さんづいてます(笑)。この方も、コンスタントに新作が
出ますね~。ファンとしては追いかけるのがちょっと大変ですが^^;
シリーズ第二弾。怪我で陸上部を辞めざるを得なかった大地が、仕方なしに入部
した包丁部での活動も二年目に。三年生が引退し、唯一二年の大地が必然的に
部長に繰り上がった。しかし、引退した筈の颯太はなぜか放課後の包丁部に
入り浸っており、颯太の受験を心配する大地は気が気でないのだが。
大地に料理の楽しさを教えてくれた先輩二人が引退してしまい、どうなるのかと
思いましたが、後輩二人との関係も良好で、なかなか楽しそうに部活に勤しむ姿に
嬉しくなりました。料理の味付けに失敗して悔しそうなところを見せたり。
料理に対しては、大分成長している感じがしますね。料理自体も好きになって
いるのがわかりますし。
後輩の二人のキャラもいいですね。小麦粉信者の不知火に、味覚音痴の妹の
為に料理を習得しようと頑張る水野。先輩二人からもいじられまくっていた
大地ですが、今度は後輩二人からいじられる羽目に。大地がいろんな人から
愛されているのがよくわかって、微笑ましくなりました。
今回新加入の金森も良いキャラですね~。そういえば、前作で包丁研ぐのが
やたら好きな子が出て来たっけ、と読んで思い出しました(笑)。大好きな
バレーを辞めなければならなくなってしまったのは気の毒だけど、包丁部でも
楽しそうに活動しているので、これはこれで彼の為には良かったのかな、とも
思いました。
前回の秋川作品はメシマズ作品だったけど、今回はちゃんとメシウマ料理が
たくさん出て来て美味しそうでした。新入生歓迎会で出した点心が美味しそう
だった~。ほかほかの肉まんを学校で食べられたら、最高ですよねぇ。
しかし、高校の料理部って、こんなに毎日ちゃんと料理を作っているものなのだろうか。
自分の高校にこういう部活があったのかどうかも覚えてないのだけど・・・^^;
こうやって毎日料理して食べて帰れるなら、一食浮きそうだな~(セコいw)。
三年が卒業してしまっても、金森君以外にも新たに新人も二人入部したことだし、
包丁部は今後も安泰そうで安心しました。
高校のうちから、こんなに料理が出来たら、将来いい旦那さんになりそうだ(笑)。



吉田修一「犯罪小説集」(角川書店
吉田さんの作品は読んだり読まなかったりなのだけど、これはタイトルから
面白そうだったので借りてみました。
タイトル通り、犯罪小説ばかりを集めた短編集。何か、こういう事件あったよなー
と思う作品があったのだけど、読んだ後で、全てが実在に起きた事件を元に
書かれたものだと知り、なるほど、と思いました。
少女誘拐事件、痴情のもつれによる殺人事件、ギャンブルで身を滅ぼした末の横領事件、
集落いじめの末の連続殺人事件、元野球選手による強盗殺人事件。
どの事件の犯人も、かつては善人でまもとに暮らしていた筈なのに、何かの歯車が
狂って破滅に向かってしまった人間ばかり。犯罪って、こうやって犯されて行く
のだという過程が非情にリアルで、それだけに怖かったし、やるせなかった。
一番印象に残ったのは、集落いじめで狂気に陥って行く万屋善次郎』かな。
一番年下だからっていいように使われて、ちょっと出過ぎた行為をしただけで
村八分にして。村の人々の傲慢さが嫌で仕方がなかった。でも、狭い集落とかだと、
新参者は得てしてこうやっていじめられるものなんでしょうね・・・。先述した、
こういう事件あったよなーと思ったのが、このお話。村八分にされた末の連続殺人
事件、ニュースで聞いた時は暗澹たる思いがしたものです。
善次郎があのまま養蜂で上手く行っていたら、未来は違っていたのだろうな・・・と
思うと、とてもやりきれなかった。二匹の飼い犬の末路がただただ悲しかった。
『曼珠姫午睡』のゆう子のキャラクターも印象に残りました。何か、吉田さんらしい
キャラ造形というか。『怒り』に出て来た愛子みたい。なんともいえない気持ち悪さ
を覚える性格というか。そこはかとない嫌悪感を醸し出すところが。主人公の英里子が
彼女とやった中学時代のテニスの試合での様子なんかもう。ぞわーっとしました。こういう、
なんだか嫌悪感を誘うキャラを描くのがほんとに上手いですね、吉田さんは。
英里子の方もちょっと嫌味な性格でしたけどね。でも、セラピストの誘いに
最後まで乗らなかったのは偉いと思いました。こういう所で踏みとどまれるかどうかで、
犯罪者になるかならないかが分かれるのかもしれない、と思いました。
もっとミステリっぽい作品なのかな、と期待してたんですけど、普通だった筈の人物が
犯罪を犯すという事実までが描かれるだけで、その動機や内面に肉薄するところまでは
行ってない。そういう意味では、オチらしいオチがなかったりするので、若干もやもやは
残ります。でも、これはこれでいいのかな、と。吉田さんは、敢えてそこを書かれない
のでしょうし。犯罪を犯す動機なんて、その人にしかわからないのだし。周りは、いくら
でも好き勝手に推測出来ますけどもね。
そもそも、吉田さんの作品にミステリ的なオチを期待してはいけないと思っているので
(今までの作品で学習した)。『悪人』や『怒り』のような作品に近いのかな。
あくまでも、『これこれこういう事件があった』という犯罪事件を集めた作品として、
面白く読めました。ちょっと、気が滅入りましたけどね。