ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

下村敦史「悲願花」/古内一絵「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」

こんばんはー。
昨日のサッカー、興奮しましたねー!!イラン相手に厳しい戦いになるだろうと予想
していましたが、蓋を開けてみたら3-0の圧勝。ここまでの点差になるとは・・・。
大迫いると全然違うチームになりますね。びっくり。あとは富安の安定感にもびっくり。
ほんとに20歳か・・・。南野の献身的プレーにもしびれたし。原口のダメ押し
ゴールも素晴らしかった。それぞれに活躍してくれて観ていて本当に面白い試合
でした。
優勝まであとひとつ。頑張れ、日本~。
あ、もちろん、大坂なおみちゃんの優勝にも興奮しまくりました。2セット目
取られた時はもうダメかと思いましたが・・・精神的な成長を感じました。
サーシャコーチのおかげかな。
世界ランク1位は本当に日本の誇りです。日本人の活躍はやっぱり嬉しいものですね。

 

今日も二冊ご紹介。

 

下村敦史「悲願花」(小学館
下村さんの最新作。主人公は、放火による一家心中の生き残りとして辛い人生を送って
来た女性、幸子。親に『殺された』という記憶は幸子に重い傷を残し、大人になっても他人に心を開けないでいた。そんな中、幸子は高校時代の友人に誘われて婚活パーティに参加し、一人の男性と知り合いになる。幸子はその日から少しづつ男性と仲良くなっていくが、どうしても過去の記憶のせいで、深い関係に踏み込めないでいた。
そんなある日、幸子は彼の部屋でガスコンロの火を見てパニックになってしまう。
未だにあの日の記憶を引きずっていることを再認識させられ愕然とした幸子は、
前に進む為、今まで頑なに避けて来た家族の墓に行ってみようと思い立つ。
児童養護施設の先生から聞き出した家族の墓を訪れた幸子は、そこで偶然一人の
女性と出会う。あろうことか、その女性―雪絵もまた、一家心中の生き残りだった。
しかし、幸子と違うところは、彼女が一家心中を図った張本人だったことだった。
子供を見殺しにした加害者の立場である雪絵に、自分の母親を重ねてしまう幸子は、
彼女を放っておけなくなり、親しく付き合うように。
しかし、心の中で雪絵が許せない幸子は、心無い言葉で彼女を傷つけてしまう。
そして、雪絵はある行動に出る――。
一家心中の生き残りという特殊な立場の人間が二人も同時に出て来るというのは、
さすがにちょっとご都合主義に感じなくもなかったですけど、ミステリーとしては
とてもよく出来ているお話だと思います。正直、ヒロインの幸子にも、もうひとり
のヒロイン雪絵にも、好感は持てなかった。こんな立場に立たされたら、性格が
歪んでも仕方がないとは思うけれど。ただ、幸子は被害者側ですが、雪絵は加害者側。幸子が卑屈になるのはまだ理解出来たのだけれど、雪絵の、自分は被害者だと
開き直らんばかりの態度には何度もムカムカさせられました。最後に明かされる
真実を知っても、それはあまり変わらなかったです。どんな理由があっても、
子供を道連れにして死のうとするなんて、絶対に許されることではないです。
自分がいなくては子供が可哀想、などと思うのは親のエゴでしかないと思う。
例え生き残った娘が母親のことを許したとしても、雪絵は絶対自分の犯した罪を
忘れてはいけないと思いました。
幸子の両親を死に追いやった郷田が終盤に明かした真実には驚かされました。
ただただ、憎むべき存在だと思っていたから。この反転はお見事でしたね。
被害者と加害者が紙一重だと痛感させられる彼の言葉には、とてつもない重みが
ありました。
誰だって、被害者から加害者になり得る。被害者でいるうちはまだいいけれど、
加害者になった途端に本当の地獄が来る。郷田のやりきれない気持ちが痛い程
伝わって来て、胸が苦しかった。郷田はきっと、幸子を救いたかったのだと思う。
幸子に前を向いて欲しかったのだと。郷田自身の救いはどこにあるんだろう。
どうしようもなく、やりきれなかった。
でも、その思いが幸子に伝わって良かったです。雪絵親子のことも影響している
のだとは思うけれど。ただ、あんな状態で放置した婚活相手に、今更連絡して
返事が返って来るのはちょっと都合良すぎでしょ、とツッコミたくなりました。
幸子の重い境遇を知って相手がどういう態度に出るのか、そこはあんまり明るい
未来が想像出来なかったですね。上手く行くといいな、とは思いますけどね。
重い主題をぐいぐい読ませる手腕はさすが。終盤にしっかりミステリ的な仕掛けが
用意されているところもいいですね。やはり、安定した実力のある作家さんだと
思いました。

 

古内一絵「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」(中央公論新社
以前から気になっていた作品。シリーズもので、全部で四作ほど出ている模様。
図書館の新着情報に載る度になんとなく気になってチェックしてたんですけど。
最近シリーズの新刊が出たようなので、まずは一作目から、と借りてみました。
この手の、美味しいお料理が疲れた人を癒やして行く系の連作集は大好きで、
昨年もいろいろと読みましたが、本書もとても良かった。
昼間は怪しげなダンス衣装の専門店ですが、夜はダンス衣装を作るお針子たちの為
の賄いを振る舞うカフェ『マカン・マラン』。夜更けにしか開店しないこの不思議な
隠れ家カフェに、疲れた心と身体を抱えた客たちがやってくる。カフェの店主は、
女装のドラァグクイーン、シャールさん。シャールさんが作る身体に優しい
お料理を食べて、心も身体も満たされる。
ごく一部の選ばれた人しか入れないお店ではありますが、こんなお店があったら
通いたくなりますね。シャールさんのキャラクターがとても良い。とはいえ、
私の中で、シャールっていうと、どうしても成田美名子さんのエイリアン通り
のシャール君を思い出しちゃって微妙な気持ちになったりしたんですけど
(←わかる人だけわかってください。大大大好きな漫画でしたwww)。
シャールさんの身の上に関しては、結構早い段階で予想はついてしまいました。
ウィッグつけてるっていうのと、いつも首にスカーフを巻いているっていうのも
引っかかっていたし。
わかってはいても、四話目の展開は辛かったな。シリーズの続編が出ていること
から、良い結果だったことは推し量れるけれど。彼がどんな風に戻って来るのか、
続きがとても気になっています。四話目では、前の作品で出て来た主人公たちが
再び登場して、シャールさんを待つ為のスープを一緒に作って行くところが
嬉しかった。みんな、それぞれに前を向いて過ごせているようでほっとしました。
璃久君の再登場も嬉しかった。
シャールさんが作るお料理は本当に凝っていて美味しそう。そして、とても身体に
良さそう。
それぞれの体調に合わせて作ってくれるお料理。やっぱり、心が満たされる為には、
お腹も満たされないとダメですよね。栄養のある美味しいものを食べるって、
本当に生きる上で大事なことだと思う。人間の身体は、食べるもので出来ているん
ですもの。シャールさんのお料理はどれも、その一番大事なことに気づかせて
くれるところが素晴らしいです。
きっと作る人の優しさと愛情がたっぷり入っているからだと思う。
ただ、開店するのが深夜ってところが個人的には問題ありだと思いますが・・・。
どんなに身体に優しい食べ物でも、夜中に食べるのは躊躇してしまうなぁ。普段、
夜9時以降は食べない主義なんで・・・^^;まぁ、シャールさんのお料理は
胃にもたれないものばかりだったりするんですけどもね。できれば昼間に
食べたい(笑)。
ちなみに、タイトルの『マカン・マラン』というのは、インドネシア語
『夜食』という意味だそう。お針子たちの夜食から始まっているからですね。
お針子たちとシャールさんとのやり取りも楽しかったです。シャールさんの
学生時代の同級生、柳田さんとのやり取りも。ぶっきらぼうな柳田さんが、
学生時代とは変わってしまった同窓の友人のことを、口では悪態をつきながらも、
内心では心から心配しているのが伝わって来て、二人の関係が微笑ましかったです。
どのお話も良かったです。出て来るお料理も全部美味しそうだった。夜中に
読むのは危険かも(笑)。
続きも早速予約してしまった。早く回って来ないかな。