ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

北村薫/「街の灯」/文藝春秋刊

日常の謎系ミステリの創始者とも言える御大北村薫さんの「街の灯」。

昭和初期、上流階級のお嬢様・花村英子の家にやって来た新しい運転手は、まだうら若い女
だった。別宮みつこというその女性を気に入った英子は、自分の専属運転手に指名し、ちょうど
読んでいた「虚栄の市」という小説にちなんで、ベッキーさんと呼ぶようになる。聡明なベッキー
さんと、令嬢英子が日常の謎を解く連作集。

昭和初期の上流階級の人々がメインに出てくるので、全体的に流れる空気もお上品でゆったり
した雰囲気。英子はお嬢様な割りにかなりさばさばしていて、好奇心も旺盛な所に好感が持てます。
ベッキーさんも素敵な女性だし。二人のコンビがすごくいいです。北村さんの書く女性っていま
ひとつ好きになれないタイプが多いのですが、この作品は良かったですね。イメージは完全に
宝塚なんですけどね・・・。
謎解きものとしては地味かもしれないけど、小粒ながらまとまっていて、北村さんらしい上質の
ミステリを読んだって感じ。ベッキーさんはとても謎めいている女性なので、もう少しベッキー
さんの内面も書いて欲しいです。是非続編を期待したいですね。

ところで、この作品は本格ミステリマスターズシリーズなのですが、このシリーズから出る
作品の特徴として、やたらに長い解説が入るというのがあります。時にあとがきだったり、
インタビューだったりするのですが。本編以外に楽しめるという点ではかなり嬉しいのですが、
本編読んでいてまだまだ続きがあると思って読んでいると、唐突に終わっちゃって「あれ?」と
拍子抜けすることもしばしば。いいのか悪いのか。まぁ、作家陣も豪華ですし、装丁も綺麗なので
気に入っているシリーズではあるのですけどね。