倉知淳さんの出世作、猫丸先輩シリーズ第3弾「猫丸先輩の空論」。
小さな身体にくりんとした仔猫のような丸い目、長い前髪がふっさりと眉の下まで垂れた童顔男・
猫丸先輩が大活躍する連作短編集。ベランダに毎朝必ず置かれるペットボトル、交通事故現場に
次々集まる無線タクシー、閉ざされたテントの中で割られていたすいか・・・等、6つの
日常の謎を猫丸先輩が解き明かす。
相変わらず、人を食ったような猫丸先輩。自分勝手で自己中心的。どうも、性格的には
好きになれるタイプのキャラではないのに、猫丸先輩だと許せてしまうから不思議です。
読めば読む程正体が知れないあたりが、謎めいていて良いのでしょうか。
ほんと、いろんなバイトしてるし、神出鬼没だし、顔も広いし、不思議なキャラクターです。
それぞれの謎自体は大したものではなく、推理もちょっと強引な感じもしますが、軽く読めて
楽しめます。特に、ラストの「夜の猫丸」は面白かった。倉知さんらしい仕掛けという感じ。
八木沢君も出てくるし(いつもこの人が猫丸先輩の一番の被害者という気がするのですけど)。
それぞれの短編のタイトル、有名なミステリ小説のパロディなのですね。読んでない作品が
多いのですが、面白い趣向ですね(京極さんの「どすこい」もそうだったけど・・・あっち
の方が馬鹿パロディという感じ)。
猫丸先輩との出会いは創元推理から出た「競作・五十円玉二十枚の謎」での短編が初めてでした。
この作品ではペンネームも違ってたのですよね(佐々木淳さん・・・本名?)。
この時から猫丸先輩は、チェシャ猫のような人を食ったようなキャラクターで強烈な印象が
ありました。まさかこんなに出世するとはね~。しかし「五十円玉~」は面白い作品でしたね。
いろんな人が同じ主題で謎を解くというのは、それぞれの作家の特色が出て楽しい。
またこういう企画やってくれないかな~。新世紀「謎」倶楽部の面々とかで。
次の企画はリレー小説ではなくて、こんなのもどうでしょうね~?(誰に言ってる?)