ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山口雅也/「チャット隠れ鬼」/光文社刊

重厚な本格ミステリを提供することで名高い山口雅也さんの変化球「チャット隠れ鬼」。

国語教師・祭戸浩実は、学園の理事長から生徒をネット犯罪から守る為、ネット上で起こる出来事を監視する‘サイバーエンジェル’に任命される。パソコン初心者の祭戸は、パソコンに慣れる為コミュニティ・サイト「ジャパン・オン・ライン」に出入りし始める。祭戸は、そこで出会った[Jezebel-P]との
やりとりに夢中になって行くが・・・。果たして[Jezebel-P]の正体とは!?

基本的にほぼチャットの会話部分で物語が成立している為、小説としては非常に珍しい本文横書き
で左綴じの製本形式になっています(いわゆる洋書型ですね)。
変わった試みで、興味深く読みました。チャットの会話が多いので、簡単に読めますが、ちゃんと
山口さんらしい仕掛けもあり、面白かったです。ネット上の匿名性がポイントなのは言うまでもなく、
[Jezebel-P]が誰なのか?ということについては、登場人物も少ないので割と当たりをつけやすい
とは思うのですが、その後にもちゃんと仕掛けがあるので、全体的には面白く読みました。
強烈な印象はありませんが、程よく纏まった良作と言えると思います。こういう形式なので、
長すぎず、コンパクトな感じがいいですね。
「奇遇」はなかなかすごかったので・・・。いや、あれはあれで面白かったのですけども。

山口さんに関しては、実はあの超名作と名高い「生ける屍の死」を読んでいないので、いまひとつ
語る資格がないように感じてしまうのですが・・・(家にはあるのですけど、なんとなくタイミング
を逃して未だに読んでいないのです)。そんなこと言ってる間に早く読めよ、みたいな(苦笑)。
ちなみに、私が一番好きなのは推理冴子シリーズです。翻訳ものが苦手な人間としては、
キッドピストルズよりもこっちの方が好みなのです(キッド~は舞台が外国ですし、雰囲気も
翻訳っぽいので・・・)。今後、冴子姉さんのお見合いがどうなるのか気になって仕方ありません
・・・全然続編出ませんけど(涙)。