ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

ほしおさなえ「紙屋ふじさき記念館 麻の葉のカード」(角川文庫)

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ほしおさんの新シリーズ。今度は東京日本橋の、和紙の記念館が舞台。紙や紙製品に

魅せられた女子大生と、和紙の記念館の館長を勤める気難しい青年が織りなす

ハートフルストーリー。

和紙の奥深い世界が垣間見られる作品で、活版印刷日月堂のシリーズとはまた

違った風情のある作品で素敵でした。日常で和紙を触る機会ってほとんどないけど、

やっぱり、実際見ると趣があって素敵だなぁと思います。和紙の製造工程とかを

知ると、本当に手間がかかって大変で、それだけ貴重で価値の高いものだという

ことがわかる。こういう日本の伝統的な技術は、廃れないで受け継いでいって

もらいたいなぁ。

紙の手触りは、私も大好き。本はやっぱり電子じゃなくて紙媒体で読むのが一番

だと思っているし。あの、紙のページをめくる感覚がたまらないんですよね。

辞書の薄い紙の質感とかも大好きだし(普段辞書引くことはもうほぼないけどもさ

^^;)。そういえば、三浦しをんさんの舟を編むで、辞書編纂をしている

主人公だか誰だかが、辞書の紙の手触りにやたらに拘っていましたよねぇ。プロ

だからこそ、紙の質感にとことんこだわるんだろうなぁと思いましたっけ。

寂れた和紙の記念館を、女子大生の百花や、彼女の友達たちのアイデアで少しづつ

生きかえらせて行く過程にワクワクしました。SNSなんかを使って拡散するって

いうのは、今どきですよね。今はそういうツールがあるから便利といえば便利

ですね。一度バズってしまえば、一気に多くの人に知らせることが出来るんです

から。手先が器用な百花が作るカードや貝のシートを利用した紙の小箱のアイデア

素敵でした。実物見てみたいなぁ。

引っ込み思案の百花と無愛想な一成。始めは全く噛み合わなかった二人が、記念館

の立て直しを通して少しづつ近づいて行くところがいいですね。少女マンガ的な

展開が大好物の私としては、今後の二人の関係が楽しみで仕方ありません。続刊

の発売も決定しているようなので、続きが読めるのが楽しみです。

主人公が訪れる紙こもの展に、三日月堂のものらしき活版印刷で作られた小物が

売られていたり、主人公の通っている大学には、菓子屋横丁月光荘シリーズの

主人公の恩師・木谷先生の授業があったり(同じ大学?)と、他のシリーズとの

リンクがちょこちょこ出て来るのも嬉しかったですね。