ミステリ読書録

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高田崇史/「カンナ 戸隠の殺皆」/講談社ノベルス刊

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高田崇史さんの「カンナ 戸隠の殺皆」。

甲斐を裏切って逃亡した諒司が残した『戸隠を調べてみろ』という言葉をたよりに、長野の戸隠に
向かった甲斐たち一行だったが、突然の霧に出会い、道に迷って神社に辿り着く。そこは隠岩戸宮
だった。夜も更け一晩泊まらせてもらえることになった甲斐たちは、本殿で雑魚寝することに。
夜中目が覚めた竜之介は、トイレに行く為本殿を出ると、社務所の方で人声を聞いた気がして
中を確かめてみると、宮司が女に刺されているところを目撃する。慌てて本殿に戻り、甲斐たちを
連れて社務所に戻ると、女も死体も忽然と消えていた。消えた宮司を捜すうち、甲斐たちは地下道
への入り口を発見する。地下道を探索するうち、彼らは得体の知れない何者かに襲われることに
――シリーズ第5弾。


恐るべきハイペースで刊行されているこのシリーズ。ようやく回って来たかと思ったら、もう
次が出る(出た?)んですね。追うのが大変・・・QEDの方も最後に出たやつ積んでるのに^^;
今回の舞台は戸隠天照大御神天岩戸伝説がテーマ。終盤の天照大御神が閉じこもった天岩戸の
一枚岩の戸が内側から閉ざされたのか、外側から閉ざされたのか、という甲斐の問いかけと
その答えには感心させられました。全く考えたことがなかったけれど、言われてみれば確かに
不思議に思えます。知られざる歴史の齟齬に気付くその着眼点はさすがだなぁと思いました(実際
学術的に論議されているのかもしれませんが^^;)。だからといって、岩戸が天照大御神
○だって説には目が点になりましたが・・・^^;ちょ、ちょっとさすがに強引すぎる気がするの
ですが・・・^^;
それに、戸隠(山)の神様が『ボッチ』と呼ばれていることと、太太神楽を結びつけてダイダラボッチ
つまり『タタラ(製鉄)』が出て来るくだりには、もうお約束すぎて失笑。これを出さずして日本の
歴史はあり得ないってことなんですかね。


ただ、シリーズとしては、前作でせっかく物語が進んだかと思いきや、またも失速。甲斐たちと
諒司が出会うこともなく、諒司が持ち出した社伝の謎も明かされないまま、甲斐と聡美の結婚話
も進まない。貴湖と甲斐の間にちょっとだけ恋愛感情が芽生えて来たかな?と匂わせる記述が
出て来たことと、終盤の貴湖 V.S.聡美の女の戦いだけが数少ない読みどころだったような・・・。
前作のような嬉しいサプライズもなかったしなぁ。また出て来ないかな、あの人・・・。聡美
の祖父、名張の毒飼い・鍬次郎と、毒草師・御名形が繋がっていたりしたら面白いと思うの
だけれど、さすがにそれはないかな~^^;

今回はストーリー的にさしたる盛り上がりも見せず、繋ぎの一冊という感じでした。
もはや惰性で読んでいる気がしないでもないこのシリーズですが、意地でも最後まで追いかけ
ますよ~。貴湖と甲斐と聡美の三角関係も面白いことになってきそうだしね(笑)。