ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加藤実秋/「黄金坂ハーフウェイズ」/角川書店刊

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加藤実秋さんの「黄金坂ハーフウェイズ」。

都心なのに江戸情緒満載、ほのかなフランスの香りと猫たちの姿が色を添える黄金坂。流行の町の、
半端なやつら。ユルい友情と日常の謎、記憶の中の"殺人"――『インディゴの夜』の著者、新たな
代表作!!(紹介文抜粋)


加藤さんの作品は、新刊が出るとつい予約しちゃうんですけど、ここ最近はかなり微妙な評価の
作品が多くて、今回のもどうかなぁ、と若干嫌な予感がしつつ読み始めたんですが・・・案の定
というか、嫌な予感が的中してしまいました。いつもの80年代臭みたいなものはそれほど
感じなかったんですけどね。
でも、読んでいて、一体何を狙って書かれた作品なのかがよくわからなかったです。いろんな
要素がごっちゃになっちゃって、焦点がブレちゃってる印象でした。主人公の隼人と楓太の
探偵ごっこの部分でも、結局彼らがきちんと解決した事件ってないように思うんですが・・・
なんとなく周りの人の手助けがあって、うやむやな感じでめでたしめたし、みたいな。なんで
あの状態で、黄金坂の住人が隼人たちに厄介ごとを持ち込んで来るのかがよくわからな
かったです。全然頼りになりそうになかったですけど・・・。二話目のギャルソンレースも結局
隼人は失敗してますし。三話目の黄金坂の再開発計画の顛末も、あまりのご都合主義的結末に
呆れ果てました。結局この問題だって、隼人達は直接的には何の役にも立ってなかった
ですからね。第四話で隼人に嫌がらせをした犯人の犯行理由にも脱力。犯行が明らかにされた
後の犯人と隼人との間にも、もっと悶着があってもいいと思うのに、そこもなし崩しのまま
解決。なんだよ、それ、といちいちツッコミたくなりました。


バーHOLLOWを拠点として、若者たちが中心になって物語が展開していくところなんかは
インディゴシリーズと似た印象なんですが、一人一人のキャラ造形がいまひとつぱっとしないので、
キャラ読みも出来ないし、冒頭から意味深に出て来る朝美の死の真相に関しても、さほどの
ミステリ要素とはなってないので、読みどころがさっぱりわからなかったです。どっちつかず
にしないで、もっと焦点を絞って書いてもらいたかった。どれもこれもが中途半端な書き方
なので、楽しめる要素が全くなかったです。隼人たちのところに持ち込まれる問題も、どれもが
低レベルで、いまひとつ魅力的に感じなかった。
若者たちが頑張るこの手の作品にしては、ワクワク感がなかったというか。隼人のキャラ造形にも
問題あったと思いますけどね。イズミのキャラも、もうちょっと魅力的に書こうと思えば書けた
ように思うんですけどねぇ。
とにかく、一つ一つの事件がゆるすぎ。加藤さんにそれほどミステリを期待してはいないけど、
それにしたって、ねぇ。もうちょっと書きようがある気がするんですが・・・。


むむ。またもがっつり黒べる記事になってしまった。だって、読んでても、全然先が気になら
なくて、正直惰性でページをめくってるような感じだったんですもの^^;
一話ごとの完成度が低すぎて、褒めどころが見つからなかったです・・・。
最近の加藤作品って、大抵いつも同じような感想になっちゃうんだよな~^^;でも、なんとなく
新作が出ると条件反射で予約してしまうという^^;そろそろ追いかけるのやめようかなぁ・・・。

読んでる時は全然気付かなかったのですが、黄金坂って、神楽坂がモデルなんですね。いろいろ
ネットで書評を見てたら、そこに触れてる方が多かった。言われてみれば、なるほど。街とか
坂の雰囲気とか、神楽坂っぽい。神楽坂って銀杏が多かったんでしたっけ。最近行ってないから
覚えてないや。黄金坂の街の雰囲気は良かったですけどね(あ、やっと褒めどころ発見^^;)。