ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮部みゆき「過ぎ去りし王国の城」/西澤保彦「小説家森奈津子の華麗なる事件簿」

どうもこんばんは。毎日あっついですねぇ。
水分ばっかり摂ってしまいます。お腹によくないのはわかっているのですが・・・。
なんだか今年は、夏らしい夏って感じがしますね。
みなさまも、ご体調崩されませんように。


読了本は今回も二冊です。

宮部みゆき「過ぎ去りし王国の城」(角川書店
宮部さんの最新作。またしてもファンタジーらしいと知って、いまいち
読むテンションが上がらずに読み始めたのですが・・・あれれ。今回は意外と
面白く読めました。設定がわかりやすかったからかな。
推薦で早々に進路が決まった中学3年生の尾垣真は、2月のある日母親から頼まれた
用事を済ませに銀行に赴くと、そこで一枚の古城のデッサンと出会い、妙に惹かれる
その絵を思わず持ち帰ってしまう。自宅でその絵を眺めているうちに、真はその絵に
自分の分身(アバター)を描き込むことで、絵の中に入り込めることに気付く。
しかし、絵が苦手な真は、ハブられ女子の美術部員、城田珠美に協力を頼む。
始めは渋っていた珠美だったが、古城の絵の不可思議な魅力に抗いきれず、アバター
描くことを承知する。二人のアバターを描いて絵に入り込むことに成功した真と珠美は、
古城に一人の少女が閉じ込められていることを知る。絵の中でパクさんという冒険仲間
とも出会い、塔の少女が十年前に起きた現実の失踪事件と関連があることを知るのだが――。

主人公が絵の中に入って冒険する、という設定はファンタジーとしては割合王道では
あると思うのですが、絵に入る為には精巧なアバターを描き込む必要があったり、
現実に戻った後は酷く体力を消耗して具合が悪くなったりするなど、意外と細かい部分まで
設定が考えてあって、その辺りで他の作品との差別化を図っているのかな、と思いました。
真は良くも悪くも平々凡々、学校では空気のような存在の学生。悪いこともしなければ、
特別良いこともしない。進路だって、高望みはせず、無理せず入れそうなところに
推薦で入る。自己主張がなさすぎてつまんないタイプだなーと思いました。ただ、
学生時代の自分がまさに真みたいなタイプだった訳で・・・多分、これって同族嫌悪
ってやつなんだろうなぁ。好感が持てたのは、圧倒的に珠美の方だったんだけれど。
珠美は、スクールカーストの中では最底辺にいるハブられ女子。カーストの最上位に
いる王女様・江元の目の敵になったばかりに、酷いいじめの対象になってしまう。
それでも、凛として絵元に屈しない態度は立派だし、内心では泣きたいくらい辛い
だろうに、まったくそういう素振りを出さないところは強いな、と思いました。
家庭でも継母たちから冷たい態度を取られて孤立しているし、なんで彼女ばっかり
こんな辛い目に遭わなきゃいけないのかなぁ、と悲しくなりました。普通ならば、
医師の娘としてもっと堂々と生きていられた筈なのに。ラストで、彼女が自分がいつか
死ぬ時にやりたいことを真に告げるのですが、その内容が切なかったです。
終盤の彼女の活躍には目を見張るものがありました。その代わり、真のダメダメっぷり
がより目立ってしまった気もするけれど。主人公の割に、まったくいいところが
なかったですね、彼。珠美の勇気が素晴らしかっただけにね。
ラスト、真の為に珠美はこういう選択をしたんでしょうね。真がもっと、学校で
堂々と珠美を友だちだと宣言出来るような人間だったら、こういう終わり方では
なかったのかも・・・。
できれば、珠美の側の問題ももう少し解決されて欲しかったな。江元や尾佐に
一泡吹かせるとかさ。家庭の方でも、何か少しでも珠美が生きやすいように
変わる要素があったら良かったのに。そこはすっきりしなかったです。それが
現実なのかもしれないけれど・・・伊音ちゃんの問題は、あんな風にいい方に
向かったのだから。ご都合主義だろうが、そこはもう少し救いがあって欲しかったです。

すっきりしない部分は残りましたが、宮部さんのファンタジーにしては
すんなり楽しめて良かったです(いつも大抵相性悪いので^^;;)。
ネット検索していたら、本書を昔読んだ佐々木淳子さんのSF漫画ダークグリーン
と比較されている方がいらっしゃって、なるほど!と思わされました。確かに似ているかも。
あれは夢の中に入って行って戦ったり冒険したりするってやつだったと思うけど。
懐かしいなぁ・・・。もう一度読み返したくなっちゃいました(笑)。
ちょっとBLっぽかったのよね(笑)。大好きだったなぁ、佐々木淳子さん。まだ
漫画描いてらっしゃるのかしら。『那由多』とか好きだったなー。レコード(と、年が
バレる^^;)持ってたもんな(笑)。



西澤保彦「小説家森奈津子の華麗なる事件簿」(実業之日本社文庫)
森奈津子シリーズだけをまとめた作品集。すみません、冒頭の『なつこ、孤島に囚われ』
は既読だった為、すっ飛ばしました^^;四作目の『キス』も既読では
あったのですが、そっちは流れでつい再読しちゃいました。『なつこ~』もどうせ
内容覚えてなかったから再読しても良かったんだけどね・・・。
相変わらずレズとエロスとわけのわからないSFが満載でした^^;
特にラスト一作はメタなのか何なのか、全く意味がよくわからなかったです。
多分□で囲われた部分はシロクマ宇宙人の創作小説なんでしょうけど・・・
ラストも創作小説で終わっているから、何が何やらって感じでした。
作品としては、二作目が一番オチもきっちりあるから面白かったかな。
途中お下品過ぎてしーん・・・って感じになりましたけど(笑)。
読む人によってはドン引きするんだろうなー^^;
でも、内容はおもいっきりお下品なんですが、なぜか森奈津子嬢自身は妙に品が
あるんですよね。話す内容はやっぱりお下品だったりするのだけど(苦笑)。
実際の森さんもこんな感じなのかなぁ。なんか、多分に西澤さんの妄想(願望?)が
入っているような気がするのだけど^^;
森さんの西城秀樹のおかげです』は持っているのだけど、未だにきちんと読んだことが
なくて、長年本棚の肥やしになっています。ぱら読みくらいはしてるんだけども。
やっぱりエロとレズが満載だったような・・・^^;;
西澤さんがそれほど衝撃を受けた本だというのだから、一度きちんと読んで
みた方が良いかしら。
西澤さんのエロとレズとSFに耐性がある人のみお読み頂きたい作品ですね。
間違っても真面目なミステリファンは読んではいけません・・・。